なまくらどもの記録 ver.2

読了記録(節操無しエンタメ系)

2006年下半期ライトノベルサイト杯(新人・新作部門)

煌夜祭」(多崎礼中央公論新社C NOVELS ファンタジア)
煌夜祭 (C・NOVELSファンタジア)【06下期ラノベ投票/単発/4125009481】
 仮面をつけた語り部たちが集い、かわるがわる語り合う煌夜祭のため、滅亡した島の館に集った二人の語り部。二人は静かに語り始める。それらは、冬至の日??煌夜祭の日に人を食べずにはいられない、死ぬことができない魔物に関する物語ばかりだった。
 「ライトノベル」の枠からは外れるかもしれませんが、特別な作品を生み出した新人さんとして、挙げたいと思います。昔話風に語られる物語たちの中に「真実」が見え隠れしていく様子が楽しめました。キャラクター性はあまりないけれど、「物語」がある話が好きな方ならおすすめです。


「花守」(越後屋鉄舟GA文庫
花守 (GA文庫)【06下期ラノベ投票/単発/4797337125】
 鬼をその身に飼う「花主」、この地に蔓延する「たま」を払うために「花守」から鬼を呼び出す「花守」。二人は対であり、ともにいることが何よりも喜びだった。しかし、「花主」は短命であることがあらかじめわかっていた。高校生生活を送りながら、「花主」と「花守」として同じ時を過ごす子規と春嶽。二人は戦いながらも、二人でいられれぱ幸せだった。この幸せが、いつまでも続くわけがないとわかっていた。でも、死ぬ時まで、このままでいられると思っていた。
 いやあ、いい話読ませてもらいました。私は「感動系」は好きではないのですが、これはよかったです。運命に唯々諾々と従うだけではない話で、そこまでの心の変遷がわくわくさせてくれました。ラストも希望が見える話で、よくまとめたと思います。おすすめです。ライトノベルというよりは学園・伝奇もの。萌えはかなり少なめです。


「宝印の騎士」(西城由良・新書館ウィングス文庫
宝印の騎士 (1) (ウィングス文庫)【06下期ラノベ投票/単発/4403541127】
 「宝印」の力を学ぶ学院の卒業試験に見事合格!とおもいきや、不合格を宣言され、追試を受けさせられることになったスラム出身の孤児、ノイル。下流貴族のおどおどした少年、ウィリップと一緒に追試に挑戦してはみるが、ウィリップは非協力的。実は、彼は何か秘密をもっているらしいのだが……。
 少女系文庫からも一つ、新人さんを。文章はこなれていてさらーっと読めました。ぼーいずらぶくささもなく、普通に少年たちがじゃれあっているという感じで、正しい「少女向け作品」だなと。少年たちが邪気なくけんかしつつ仲良くしている話が好きならお勧めです。「そらのこども」(萩原麻里・ヒヨコ舎)と非常に近い雰囲気です。


「月の娘」1巻(渡辺まさきHJ文庫
月の娘 1 (HJ文庫)【06下期ラノベ投票/単発/4894254441】
 「イブキ」と名乗る得体のしれない「モノ」にとりつかれた一沙は、渋々「イブキ」の身体探しを始めるが……。異世界から来た魔女の話。
 法則のあるファンタジーが好きな私には、なかなかのヒットでした。今後も楽しみです。


「クジラのソラ01」(瀬尾つかさ富士見ファンタジア文庫
クジラのソラ 01 (富士見ファンタジア文庫)【06下期ラノベ投票/単発/4829118628】
 異星人から与えられた義務として、地球人たちはある「ゲーム」に国家規模で盛り上がっていた。艦隊戦のコンピューターゲームは知識や戦略だけではなく、スポーツ的な要素も持ち、全世界のトップにたった1チームは、異星人たちのもとへ行く。それを目指して、全世界の人たちは「ゲーム」に熱狂的にはまっていく。異星人たちのもとへ去った兄を追いかけ、「ゲーム」をやっている雫は、必死の努力の末、優秀な成績を出しつつあった。伝説のメカニックを自分のチームに入れるため、ある少女と「ゲーム」の勝負を挑むが……。
 実にファンタジア文庫らしいSF。可愛らしい絵柄とはうらはらに、陰謀がありまくりというシリアスな話で、面白かったです。女の子を中心とした青春ものとしても楽しめました。異星人たちの元に行くことが目標でがんばる、というところがよくわかりませんでしたが、未知のものにわくわくする、というところはよく気持が伝わってきました。