今期は少女向け新規はほとんど読んでいないため少年向けばかりになった。
「とある飛空士への追憶」と「DRAGONBUSTER」がダントツ良かった。「ベン・トー」はあまりに票数多いのでやめたいのだが、他にいいのがなかったので。
・「とある飛空士への追憶」(犬村小六・小学館ガガガ文庫)
【08上期ラノベ投票/新規/9784094510522】
空を飛ぶ物語が好きだ。しかし、空が大好きという訳ではないし、自分が空を飛びたいという憧れを持ってもいない。「空を飛ぶこと」に対する登場人物たちの想いがいつも純粋で、その純粋さが常に嫌みでないことが、原因だろう。だから、「空を飛ぶ」物語は、純粋でいて綺麗で、よい物語が多い。そういう法則が私に存在する。そして、この物語もその一つである。
「次期皇妃を水上偵察機の後席に乗せ、中央海を単機敵中翔破せよ」との命を受けた一人の傭兵。彼はこの国では差別されるべき民族の血をひくため、その腕の良さにも関わらず、傭兵という身に甘んじていた。輝かんばかりの外見を持つ次期皇妃、ファナは最初は人形のようだったが、じきに本来の姿を彼に見せ始める。
よい物語でした、という言葉がふさわしい。「空を飛ぶ」物語が好きな人なら絶好です。切ない恋の物語でもあるけど、それがうまく舞台と物語と合っていて、嫌みがなく、始終楽しく読めました。
「さがれ」
ファナ「とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)」(犬村小六・小学館ガガガ文庫)p322より
→この作品が好きな人へおすすめな作品
「たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)」 透明感、清潔感あるキャラクター、ストーリー、ちょっとした冒険、そしてその展開が似ているかなと。恋愛はなし。翻訳もののSFですが、初心者にもおすすめです。
・「龍盤七朝 DRAGONBUSTER 01」(秋山瑞人・電撃文庫)
【08上期ラノベ投票/新規/9784048670272】
第十八皇女の月華(ベルカ)は、下町を出歩く悪癖があった。そこで見たのは、剣をふるう一人の青い目の男。彼の名は涼狐(ジャンゴ)。この都市では迫害されている民族、言愚の一人で、講武所での下働きで糊口をしのいでいた。交わることのないはずの二人の道が、交わる時がきた。
冒頭の大量惨殺、そして月華の愛らしさ、残酷な無邪気さ、涼狐の孤独、諦観と、さすが秋山瑞人、という心に残る場面が多いです。情景がいいよなー、秋山瑞人さんは。上手くアニメ化したらすごい作品になりそうなものがたくさんありますね。すごくよかった。
ただ、晴れ晴れとした寂しさがあるのみだった。
「龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈01〉 (電撃文庫)」(秋山瑞人・電撃文庫)p86より
→この作品が好きな人へおすすめな作品
「鉄球姫エミリー (鉄球姫エミリーシリーズ) (スーパーダッシュ文庫)」 これまただいぶ違いますが。こちらも残酷さとアクション、そしてそれらが簡潔にリリシズムにはしらずに描かれているところが興味深かったです。キャラクターの下品さに耐えられる方におすすめ。下品でも嫌らしくない。
・「θ 11番ホームの妖精」(籐真千歳・電撃文庫)
【08上期ラノベ投票/新規/9784048670203】
「鏡色の門」によりワープのようなことができるようになった世界。東京駅11番ホームは空中にあった。11番ホームの駅員である少女は、相棒の狼と共に今日も駅を守っている。彼女には、「鏡色の門」に関係した大きな秘密があって……。
とちゅうまでは、そのハートウォーミングさにちょっとひきぎみだったが、最後まで読むとなかなか面白かった。SF、というよりはサイバーな感じか。AIのアリスへの指示の出し方、危機回避方法のひねりだしかたが粋だった。少女に起こった出来事は過酷だったが、そこからすくい上げ方はなかなか納得くものだった。
Good Luck
『それじゃっ……すぐ後にっ。T.B. 幸運を』
I'll never give up
「引き寄せます、ミス西晒湖」
西晒湖涼子とT.B.「θ(シータ)―11番ホームの妖精 (電撃文庫)」(籐真千歳・電撃文庫)
→この作品が好きな人へおすすめな作品
「私を月まで連れてって!―完全版 (1) (JETS COMICS (4241))」 マンガですが。機械を使う、その使い方にクールさを求める感じがある話があるので。きらびやかな絵柄ですが男性でも楽しめると思います。
・「ベン・トー」1〜2巻(アサウラ・集英社スーパーダッシュ文庫)
【08上期ラノベ投票/新規/9784086304306】
スーパーの半額弁当を争う「狼」たちの孤独で熱い戦いの記録。ばかばかしさも、まじめにとことん書けば面白いんだ!という典型例のような作品。
「お前にとって半額弁当はただ売れ残って古くなった弁当でしかないのか?」
槍水仙「ベン・トー 1 サバの味噌煮290円 (スーパーダッシュ文庫)」(アサウラ・集英社スーパーダッシュ文庫)
「お前は豚か、犬か……それとも礼儀を持ちて誇りを懸ける、狼か?」
佐藤洋「ベン・トー 2 ザンギ弁当295円 (スーパーダッシュ文庫)」(アサウラ・集英社スーパーダッシュ文庫)p267より
→この作品が好きな人へおすすめな作品
「ビキニンジャ・ドキッ 1 (1) (ガガガ文庫 み 4-1)」ビキニの忍者というアホな設定ですが、中身は熱血で意外と面白かったです。女の子も楽しめるかと。
・「ようこそ無目的室へ!」(在原竹広・ホビージャパンHJ文庫)
【08上期ラノベ投票/新規/9784894256903】
無目的室という部屋に集まる「無目的部」の部員たち。そこで話された内容は他言無用。それぞれの理由からその部屋に集まる彼らの日常。「氷菓 (角川文庫)」から始まる「古典部」ぽい雰囲気の日常の謎ものです。けっこう面白かった。一篇一篇が短いのがいいですね。キャラクターはあまりはっきりしてないのでライトノベル好きにはいまいちかもだけど、日常の謎好きなら面白いかも。
「……やや誇張を含む」
黄瓦公「ようこそ無目的室へ! (HJ文庫)」(在原竹広・ホビージャパンHJ文庫)p178より