完結記念×3と、完結へのラストスパート×2。
・「オペラシリーズ」(栗原ちひろ・角川ビーンズ文庫)
【08上期ラノベ投票/既存/9784044514082】
東方の薬師で、体内に魔物を飼っているため常に病弱に見えるが剣は強いカナギ。自分には心がないといいはり、常に虚飾ばかりの空言ばかり繰り延べているように見える白皙の詩人こと、ソラ。カナギを狙う暗殺者として現れたが、目的を見失い、二人と一緒に旅をするようになった姿こそ華奢で可憐だが強大な魔法力を持つミリアン。三人の旅が終わるときがやってきた。シリーズ完結巻+短編集。
神と人の物語、というよりは、人形が人となり、人から神となる話として面白かった。世界の成り立ちがなかなか面白いので、そういうのに興味ある人もいいかも。私が特に面白かったのは、三人(というよりは主にカナギとソラ)のかけあいのところ。会話のテンポが非常によいので楽しめました。表紙を見るとごてごてした印象ですが、ちょっと雰囲気退廃的ではあるけど、一本気でものごとを単純にしたがるカナギはぜーんぜん虚飾的ではないです。少女少女もしてないし、BLでもないので、男性でも楽しめると思います。ミリアン可愛いし〜。
「カナギ、君、この三人の中で自分は比較的『一般人』だと思っているでしょう?」
ソラ「オペラ・メモーリア―祝祭の思い出 (角川ビーンズ文庫)」(栗原ちひろ・角川ビーンズ文庫)p223より
→この作品が好きな人へおすすめな作品
「魔法の庭〈1〉風人の唄 (ファンタジーの森)」 妖魔の王とうたびとの「魔法の庭」を目指す二人旅。出版社倒産のため絶版ですが、図書館・古本屋などでぜひ。全3巻。
「帝国の娘〈前編〉―流血女神伝 (コバルト文庫)」 神と人との関係もメインにかかわって来る大河シリーズ。
・「紅牙のルビーウルフ」(淡路帆希・富士見ファンタジア文庫)
【08上期ラノベ投票/既存/9784829132777】
一国の王女でありながら、狼と盗賊たちに育てられて、野性を持ったまま成長したルビーウルフ。彼女が女王として一人前になるまでの物語を描いたシリーズです。シリーズ完結巻+短編集。
シリーズ最初の頃からの、ルビーウルフは常に型破りだけど、爽快感ある選択をする、という筋が通った最終巻でした。政治ものとしてはものたりないと思いますが、王家ものとか好きな人なら面白いかも。女の子も歓迎、なシリーズです。
「自分のためで、何が悪い?」
ルビーウルフ「紅牙のルビーウルフ〈6〉自由の風が吹く夜明け (富士見ファンタジア文庫)」(淡路帆希・富士見ファンタジア文庫)p257より
→この作品が好きな人へおすすめな作品
「身代わり伯爵の冒険 (角川ビーンズ文庫)」 貴族の子女として育たなかった女の子と従者の恋愛コメディ。無自覚×無自覚。
・「風の王国シリーズ」(毛利志生子・集英社コバルト文庫)
【08上期ラノベ投票/既存/9784086011679】
唐の時代に吐蕃に嫁いだ皇帝の姪を中心とした話。いきなり主人公翠蘭が最初の巻で結婚してしまう、しかも政略結婚であり、義理の息子もできるという、少女小説には珍しめの話かと。ファンタジーではなく、時代ものです。吐蕃(チベットに存在した王国)を舞台とした小説、というだけで私にはわくわくものなのですが、風習や人々の違いと同じところが描かれるのが楽しくて好きなシリーズです。さっぱりとした翠蘭の人柄も魅力的です。時代ものだと、どうしてもロマンティックになりがちなのですが、この小説は恋愛ありでありながら、ロマンティック方向に流れないところが好きです。あくまで実務を重んじる翠蘭とリジム、しかし感情も忘れない彼らは、生きている人間と感じられます。
今回出た上下巻は、少女小説にあるまじき、と言っても過言でないほどのすさまじい展開。これはもう、歴史ものです!
「肝の太い子だな」
「翠蘭さまにそっくりです」
翠蘭とエンサ「風の王国―嵐の夜〈下〉 (コバルト文庫も 2-32 )」(毛利志生子・集英社コバルト文庫)p59より
→この作品が好きな人へおすすめな作品
「黄金の王 白銀の王」 異世界歴史もの、ただし恋愛要素なし
「忍剣花百姫伝〈1〉めざめよ鬼神の剣 (Dreamスマッシュ)」 忍者アクションファンタジー。姫がチャンバラあんど超能力で活躍。
・「伯爵と妖精シリーズ」(谷瑞恵・集英社コバルト文庫)
【08上期ラノベ投票/既存/9784086011334】
妖精伯爵を名乗りながらも、妖精を見ることすらできない自称伯爵の悪党と、妖精博士として彼を助けるリディアの妖精ラブロマンス。婚約式も無事終わり、順調に結婚へ進み始めた二人。しかし、リディアの母の故郷から、リディアの婚約者と名乗る男性がやってきたことから、また妖精がらみの騒動が始まる。
チェンジリングネタを上手く使って恋愛につなぐところがすごく感心しました。話はシリアス展開中。アニメ化企画進行中。
エドガーとふたりになると、いつも思う。
距離が近すぎないだろうか。
リディア「伯爵と妖精 紅の騎士に願うならば (伯爵と妖精シリーズ) (コバルト文庫)」(谷瑞恵・集英社コバルト文庫)
→この作品が好きな人へおすすめな作品
「ニューヨークの魔法使い <(株)魔法製作所> (創元推理文庫)」 じれじれ恋愛+妖精もの。ニューヨークが舞台で翻訳ものですが、日本の女性にすごくうけると思う。男性はいい人なのでエドガーとは正反対か。
・「荒野」(桜庭一樹・文藝春秋)
【08上期ラノベ投票/既存/9784163270401】
十二歳の少女、荒野は人に触られるのが苦手。「恋」を知らない彼女は、一人の少年と出会うが−−ひとづきあいがあまり上手くない少女が、恋としらずに感情を育てていきつつ、一人の女性として1mmずつ成長していく話。
コバルト文庫にこそ入っているべき、というような、これぞ少女小説!という話。あまり私のツボポイントばかりついてくるので、たまらなく好きだったファミ通文庫版「荒野の恋」が、ソフトカバーで、第三部を書き下ろしされて帰ってきました。私がこの話を好きなポイントは、少女時代からの成長過程を、ゆっくりゆっくり描いているところ。身体の変化、こころの変化、それにともなう嫌だというきもちと嬉しい気持ち、怖いという気持ち、その過程のひとつひとつがそそるネタばかりで、も〜たまりませんな〜というところです。女の出入りが激しい父親の影響で、荒野が少し周りよりゆっくりと、周りの様子を見ながら少しずつ変わっていくのがとてもよい。この父親がもーだめだめなところが楽しかった。「私の男」のやわらかい版というか。少女小説といっても、甘々なのではなく、荒野の周りには彼女を傷つけるものがたくさんやってきて、それでも荒野は立ち向かうのではなく、うちまかされるのではなく、すっくとただ立って周りを見ているような話なので、そういうのが苦手な人もいかがかと。今年のベスト本におそらく入れます。おすすめです。紺野キタさんが好きな方には、特におすすめ。
ミギーさんの挿絵が素晴らしい。ファミ通文庫版(二部までを収録)もおすすめです。
ファミ通文庫版(挿絵・ミギー)
「荒野、そこにときめきはあるかい?」
山野内正慶「荒野の恋〈第1部〉catch the tail (ファミ通文庫)」(桜庭一樹・ファミ通文庫)
「日々ときめくってのは、素敵なことなんだよ。じつは」
山野内正慶「荒野の恋 第二部 bump of love (ファミ通文庫)」(桜庭一樹・ファミ通文庫)p106より
→この作品が好きな人へおすすめな作品
「“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫)」 少しシリアスだけど、少し現実的で、少し現実味がない、そんなものをあわせ持っているけれど、現実を生きていくための方法のヒントになりそうな物語としておすすめです。