なまくらどもの記録 ver.2

読了記録(節操無しエンタメ系)

2008年度に私が読んだマンガのベスト5

岩本ナオ
スケルトン イン ザ クローゼット (フラワーコミックス)Yesterday,Yes a day (フラワーコミックス)町でうわさの天狗の子 1 (フラワーコミックスアルファ)町でうわさの天狗の子 2 (フラワーコミックスアルファ)
 今年は岩本ナオさんの作品にはまった。岩本ナオさんの作品にははずれがない、といってもいいくらい、ごくごく初期の作品から、なんか、いい。(「雨無村役場産業課兼観光係 1 (フラワーコミックス)」だけは私はちょっといまいちだったけど)普通ならここで恋愛に夢中になっちゃったりする、少女マンガならではな展開がなく(笑)、必ず、こういうときでもつい考えちゃうよね、といったたぐいのことがはいってきたりする。実際は、そういうもんだよね、人間って。何かだけで生きていけたりしない。ひとつのことだけでいっぱいになるだけで満足できるような、こどもの時代をすぎてしまった、でも初々しさや失敗がまだ残っている時代の話。優しくあたたかいだけではない世界、でも、冷たいものだけでもない世界で生きていくことを思わせてくれる話たちです。
 誰にでも楽しめるだろうと思うのは「町でうわさの天狗の子 1 (フラワーコミックスアルファ)」です。ちょっと「クル」短編が好きなら「スケルトン イン ザ クローゼット (フラワーコミックス)」もおすすめ。


「まるいち的風景」全二巻(柳原望白泉社文庫)
まるいち的風景 第1巻 (白泉社文庫 や 7-5)まるいち的風景 (第2巻) (白泉社文庫 (や-7-6))
 大好きな「まるいち的風景」の完結版が、文庫で出ました。
 「まるいち」という人間の動きをトレースすることのできる「機械」としてのロボットが開発されている世界。まるいちは、それ自体は意識をもたないのに、持つものの思いによって、その動きに思いがこめられ、記憶を載せることができる「もの」。あくまで「もの」としての「まるいち」にこだわった数々のエピソードは、SFらしく、かつ実生活に根付いた意識を起こされてくれます。SFとしても、ふつうのひとびとの生活の一部としても、味わいのある作品です。1巻、2巻ともにコミックス未収録作品あり。2巻には、書き下ろしの完結エピソード(長め)ありなので、ファンは必読、読んだことない方にもおすすめです。
 その書き下ろしエピソードのこの台詞には脱帽。まさしく、完結編にふさわしいエピソードでした。現代社会を生きる人々を上手く表した作品だとも思います。またこの作者のマンガ読みたいなあ。

「まるいちを使うことで失うものもあるんです」
有里「まるいち的風景 (第2巻) (白泉社文庫 (や-7-6))」(柳原望白泉社文庫)p473より


「美しいこと」(橋本みつる新書館ウィングスコミックス) 
美しいこと (ウィングス・コミックス)
 ふつうのフリをしているけれど、「ほんとうにうつくしいもの」が見たくてしかたがない少女、みなこは、超能力少年という噂の夜居くんに「うつくしいもの」をみせてほしいとお願いした。夜居くんは、ある「犯罪まがい」のことでそれを確かにみせてくれたが……。橋本みつるは、デビューの頃から変わらない青春の辛さと苦さと青さと絶望感といさぎよさと快感をいまだに持っている。青春、と言うとちょっとさわやかすぎる気がするけれど、若い頃のまだ失っていないような時期の、嬉しい楽しいだけではない感情が、快楽もあるんだけどその両方が詰まっているような物語がどろどろっとではなく、さらっと描かれています。

何でこんなに 人と感じ方が違うのかな
って色んな人がそう思ってるのかな
「美しいこと」(橋本みつる新書館ウィングスコミックス)より

「笑うかのこ様」(辻田りり子白泉社花とゆめコミックス
笑うかのこ様 1 (花とゆめCOMICS)
 観察好きの中学生、かのこは、クラスでも誰とも友達にならず、ただひたすら観察三昧。友達同士の微妙な仲たがいとか、恋の駆け引きとか、友達のダイエットを邪魔しあう関係とか。クラスの人間模様をただ観察者として見てくすくす笑うかのこに対して、干渉してくるやつらの狙いは?
 自分がひねくれた観察好きな人なので、もう楽しくてたまらんです。絵は洗練されていませんが、いかにも白泉社!という感じのネーム勝ちな作品。新人デビュー作でもあり。白泉社好きならおすすめ。毒のある台詞でも、毒で終わらないような話にきちんとなっているのが面白い。かのこにとって、「面白いこと」とは何か、というところがポイント。

「ばっかじゃなかろうか! 本当に私のこと正義の味方だとでも?
 私はただ面白い事を見ていたいだけだよ」
かのこ「笑うかのこ様 1 (花とゆめCOMICS)」(辻田りり子白泉社花とゆめコミックス)より

Landreaall」(ランドリオール)12・13巻(おがきちか一迅社ゼロサムコミックス)
Landreaall 12 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)Landreaall 13 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)
 あらすじを気にするのではなく、まずエンタテインメント性あふれる本編をぜひごらんあれ!という作品です。ただ流し読みしても面白いのに、ゆっくりと再読したらその伏線の多さ、深読みできる台詞などの深い内容に驚かされます。
 だいたいがローテンションながらも、気持ちがないわけではないひょうひょうとしていてつかみどころのないDXが主人公なために、彼を取り囲むキャラクターたちが、彼に対してどういう態度を示すか、というのが群像劇ぽくなっていて、それがまた面白いのです。今年出た12・13巻はちょうどその主人公不在のアカデミー騎士団編が中心で、オモシロー!と叫びたくなる面白さ。ひとりひとりがよく考えられて、きちんと背景があるように描かれているからこその面白さですよねえ。
 大人のエンタメ好きに特におすすめ。こどもも楽しめます。絵柄やジャンルなどをきにせず、まず最初の三巻でひとくぎりつくのでそこまで読むか、ファンタジー苦手・学園モノが好きであれば四巻からでどうぞ。