なまくらどもの記録 ver.2

読了記録(節操無しエンタメ系)

読了本

  • 月のさなぎ」幼い頃から隔離されて育つ「月童子」たちには性別がなく、18で性別を得ると「成人」したとしてこの学園を去っていく。月童子たちの憧れの対象である空と薄荷は、それぞれに恋を知り、「大人」になっていくのか……。感情がないかのようだが人形のように美しい空、ルームメイトとして空の面倒を見る薄荷は、美少年のようでその凛々しさに誰もが憧れている。とにかく流れるイメージが・情景が綺麗で、紺野キタさんにぜひともマンガ化してほしい!前半は性別のない月童子たちがわらわらしている学園の魅力にやられたけど、後半は恋に落ちて変わっていく薄荷と、薄荷とのつながりからあるものを得た空の物語にひきこまれました。こういう雰囲気が好きな人にはおすすめです。ミステリ的にはいまいちかもしれませんが……これ日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞だし。作者は別名義で前に作品を出したことがあるそうなので、読んでみようと思います。おすすめ!ところで、小麦パートはあまり意味がなくなかったですか?状況説明には必要なのかなあ……。

「二月くらいになると、昼間表面だけが解けた雪が夜に凍りついて、一枚の板みたいにかたくなっていくんだ。一面吹きっさらしの田んぼなんか、子供がずうっと歩いていけるくらい堅くなる。そんな状態の雪の上に満月が昇ると、月の灯りを雪の板が反射して、淡い金色に虹色に光るんだ。月が傾いていくと、雪は今度はボウッと青く発光する。遠くから見ると湖の底に沈んだような景色なんだ。みーんな水の底に沈んでしまって、何の音もしなくて、底だけがかすかに青白く光ってる」
雪矢「月のさなぎ」(石野晶・新潮社)p62より