少女小説らしからぬ主人公*1
少女小説の主人公といえば、「純粋・素直・天然」といった印象が強いですが、その枠に収まらない主人公の少女小説のおすすめです。
- 「幽霊伯爵の花嫁」(宮野美嘉・小学館ルルル文庫)とことん「利己的」で、「自分に利益のある」ことを常にするサアラが、17人目の花嫁として伯爵家に嫁入り。しかし伯爵は彼女に冷たく当たり……。裏があるというのでもなく、自分に正直ではあるんだげと、その「正直」さがとことん少女小説の正道とは違う方向なのがとても楽しめました。いきなり暴力?に走るところとか、過激なところとかもありですが、通常の主人公とは違う方向もアリであればぜひご一読を。
- 「デ・コスタ家の優雅な獣」(喜多みどり・角川ビーンズ文庫)マフィアの幹部のような家に引き取られた少女。だが彼女は甘やかされるだけでは生きていけないことに気づき、「悪いこと」を始めてしまう……。臆病系ヒロインがびくびくしながらも「悪いこと」に手を染めていくのが快感。
- 「世界画廊の住人」(栗原ちひろ・幻狼ファンタジアノベルス)錬金術者見習いのセツリは、この世界では珍しい「画家」と出会ってしまった。彼はセツリのことを、「世界画廊の管理人」だと言うが……。世界に隠された秘密を、セツリは解きあかすことができるのか?素直!ではない男性を主人公にした物語が、栗原さんはうまいなーと思います。「オペラシリーズ」(角川ビーンズ文庫)もその系統。ファンタジー読みとして面白かった。画廊がテーマというのも珍しいです。
- 「妓楼には鍵の姫が住まう」(水瀬桂子・三笠書房f-Clan文庫)幼い頃に死の淵から生き返ったためか、死者を見ることのできる誠二。「誠のない男」としてぶらぶらと毎日を過ごしていた。しかし、不思議な美少女と出会い、死んだかつての女の死の理由をつきとめようと決意する。誠二は情熱もなくふらふらしている青年です。