2013年度に私が読んだ小説ベスト10
・「英国マザーグース物語シリーズ」(完結)(久賀理世・集英社コバルト文庫)
少年の装いで新聞記者として働いている令嬢、セシルとその相棒の実は……な挿絵画家ジュリアンの周りに起きる事件とは?というシリーズ完結編。二人の「うそつきたち」のシリーズとしてとても一貫していてよかったです。とてもよい少女小説でした。少女小説(特にミステリ好き)ならおすすめです。
→この作品が好きな人へおすすめな作品
「貧乏お嬢さま、メイドになる (コージーブックス)」王位継承権をもっているのに貧乏暮しな公爵令嬢のジョージーのコージーミステリ。
・「幽霊伯爵の花嫁シリーズ」(完結)(宮野美嘉・小学館ルルル文庫)
幽霊を管理する役職の伯爵様と、「悪女」のサアラの物語完結。ミステリ要素もあるのですが、ミステリの枠にとらわれず、物語が傍若無人なサアラの元、みるみる進行していくのが快感でとても楽しいシリーズでした。少女小説読みでない方にもおすすめ!清廉な主人公、純粋なのが売りな主人公ではなく、常に正直で、「利己的」な主人公サアラを楽しんでください。
→この作品が好きな人へおすすめな作品
「デ・コスタ家の優雅な獣 (角川ビーンズ文庫)」また違った意味での変わった主人公です。
・「風の王国シリーズ」(完結)(毛利志生子・集英社コバルト文庫)
最初は少女小説にありがちな嫁取りものかと思いきや、すっかり歴史大河小説になり、ラスト近くでは翠蘭の漫遊記でありつつ、登場人物のひとりひとりが心を持って生きているように感じられる物語、完結。一冊一冊が楽しく読めたシリーズでした。ヒロインが女女していないので、ふだん少女小説を読まない方にもおすすめ。
「……あんたのせいじゃないぞ、ガットゥハチャどの。翠蘭どのは、ときどき飛ぶんだ。鳥みたいに、オレたち人間の手の届かないところへ行く。一瞬で。……だから、戻られるのを待つしかないんだ」
ゲンパ「風の王国 暁の歌 (風の王国シリーズ) (コバルト文庫)」(毛利志生子・集英社コバルト文庫)p223より
→この作品が好きな人へおすすめな作品
「夢の上〈1〉翠輝晶・蒼輝晶 (C・NOVELSファンタジア)」異世界ファンタジーですが、ある一時代の様々な人々の生き様を見事に描いた作品。「物語」好きは必読!
・「首の姫と首なし騎士シリーズ」(睦月けい・角川ビーンズ文庫)
インドア派で積極的なわけがない末っ子の一応姫が、政争の真っただ中でたちすくむのではなく、しっかりと見据える物語。主人公のシャーロットの、おとなしいわけではなく、冷めているわけでもなく、理性的だけど情がないわけでもない視点が面白いけど地味、なシリーズ、エルマー家編完結。まったく主人公がきゃぴきゃぴしていないし、普段少女小説を読まない方でもおすすめです。
ただただ一人の人間として、娘として――選択を託された者として、"ヘンドリクス・フォルモント"という男と向かい合う。
「首の姫と首なし騎士 誇り高き反逆者 (角川ビーンズ文庫)」(睦月けい・角川ビーンズ文庫)p145より
・「翼の帰る処4 時の階梯」(上下)(妹尾ゆふ子・幻冬舎コミックス)
貴族の生活に一向に慣れないヤエトに、さらなる嫌がらせを皇帝がかける!邪魔が入らない状況で読みたい、私のごほうびなシリーズ。自分だけではできないことも、それぞれの立場からやることをやっていく。だからできたこともあるし、救えないものもあった。それを心得つつ、次には何をしていくか。次の世代につなげていくこととか、ヤエトが歴史好きだからだろうな一歩引いた視点が好きです。
「伝えたいものがあるのは、幸せなことかもしれません」
ヤエト「翼の帰る処 4 ―時の階梯― 下」(妹尾ゆふ子・幻冬舎コミックス)p219より
・「天冥の標6 宿怨」PART1〜3(小川一水・ハヤカワ文庫JA)
「冥王斑」という死亡率、感染率の非常に高い伝染病をメインとしたSF大河シリーズ(全10巻)の、中盤完結編。えええー!と叫びたくなる展開の連続。えぐいけどすっごく面白かった!今後も楽しみです。
→この作品が好きな人へおすすめな作品
「ドゥームズデイ・ブック(上) (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-4) (ハヤカワ文庫SF)」「ドゥームズデイ・ブック(下) (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-5)」ギリギリカウントダウンなハラハラ・オール死エンド!?
・「2.43 清陰高校男子バレー部」(壁井 集英社)
バレーなんて全く興味のなかった黒羽は、転校生の灰島に影響されて部活動を開始。壁井ユカコさんらしい、憧れと妬み、そして青春あふれる作品でした。お互いに欠けたところのある登場人物たちが、その空白を埋めるのではなく、抱えたままもだえて、でもジャンプしていく様が快感。
「バレーより面白いものなんて、他にないじゃないですか」
灰島公誓「2.43 清陰高校男子バレー部」(壁井ユカコ・集英社)p208より
→この作品が好きな人へおすすめな作品
「リテイク・シックスティーン (幻冬舎文庫)」壁井さんが気に入ったのであれば、やはり対抗は豊島ミホさんさんで。
・「ヴァンパイア・サマータイム」(石川博品・エンターブレインファミ通文庫)
ヴァンパイアが人間と交代で、フツーに夜の世界に生きている世界。その狭間の時間にコンビニで知り合った男女が、(ほんっとーに)少しずつ、触れ合う物語。お互いが、お互いの知らないところを想像で埋めてみたり、それが想像であっても、将来埋められる部分なのがいいねえ……とニヤニヤしたり、もだもだしたり、楽しい一冊でした。女子にもおすすめ。
(誰かを好きになったら別の自分になれるとか、そんなのないんだなあ……)
冴原「ヴァンパイア・サマータイム (ファミ通文庫)」(石川博品・ファミ通文庫)p289より
→この作品が好きな人へおすすめな作品
「東雲侑子は短編小説をあいしている (ファミ通文庫)」ライトノベルレーベルからでてはいるものの、萌えではなく、ごくごくまっとうな恋愛小説。でもすごくもだもだできる。
・「貧乏お嬢さまシリーズ」(リース・ボウエン・古川奈々子訳・原書房コージーブックス)
20世紀初頭の第一次世界大戦後の英国。名ばかりの公爵令嬢のジョージーは、このままではひどい王子と結婚させられるために独り立ちを決心。起業してメイドとして働き始めるけれど、これがトラブルの始まり!?
最近読んだコージーで一番面白かった。ジョージーがとにかく積極的で、自分の力でチャレンジしつつ、貴族としてちゃんと王妃に対しても敬意を払うことも忘れない。ロマンス要素ももりこみつつ、友人と同居したり、殺人事件にいどんだりまあ盛りだくさん。コージーとかロマンス好きにはおすすめです!
→この作品が好きな人へおすすめな作品
「英国マザーグース物語 婚約は事件の幕開け! (英国マザーグース物語シリーズ) (コバルト文庫)」女の子であることを隠して、記者をしている令嬢セシルの物語。
・「英国式犯罪解剖学シリーズ」(イモジェン・ロバートスン・茂木健訳・創元推理文庫)
解剖学の研究者のもとを朝っぱらから訪れたレディは、敷地内で死体を発見したと言ってきた。ひきこもりの学者さんが人嫌いなのかと思いきや、そうでもなくけっこう笑うし、ぜひドラマ化希望!美人姉妹のレディとしてのしたたかさも楽しすぎです。それぞれの巻で、並行して「もうひとりの主人公」の物語が語られるのですが、これがまた面白い。恋愛はなしな頭のよいひとたちの関係って楽しいわー。
明らかに彼女は、無言のうちに、レディとして丁重に扱うことを男たちに要求していた。男たちはやすやすとこの術策にはまり、証言を終えてハリエットが着席したときには、どの顔にも庇護者然とした優しげな表情が浮かんでいた。例外は、ヒューとウィックスティードだけのようだった。
「闇のしもべ 上 (英国式犯罪解剖学) (創元推理文庫)」(イモジェン・ロバートスン・茂木健訳・創元推理文庫)p189より
たしかにクラウザーは、人間の体の仕組みと外的な力が人間の死体にどのような影響をおよばすかについて、長年のあいだ研究をつづけてきた。しかし他人の生活にずかずかと踏みこみ、質問攻めにすることで謎を解いてゆく能力に関しては、ハリエットの足もとにもおよばなかった。
「亡国の薔薇 上 (英国式犯罪解剖学) (創元推理文庫)」(イモジェン・ロバートスン・茂木健訳・創元推理文庫)p66より
→この作品が好きな人へおすすめな作品
「緋色の十字章 (警察署長ブルーノ) (創元推理文庫)」フランスの田舎暮らしのリア充っぷりが楽しい作品。主人公は警官なんだけど、ヒーローっぽくふるまわない彼の好感度が非常に高い。