なまくらどもの記録 ver.2

読了記録(節操無しエンタメ系)

2014年度に私が読んだ小説ベスト10

「水光舎四季」(石野晶・徳間文庫) 
水光舎四季 (徳間文庫 い 65-1)
 私の今年のベストは、この作品でした。ちょっとした能力を備えて生まれた子たちが、水光舎という学舎に一年のうち三か月だけ通う。ひとつの季節には、同じ能力を持つ子はおらず、三か月ごとに入れ替わり、同じ能力を持つ子たち(お互いに「春夏秋冬」と呼称している)掲示板を通じてのみ触れ合うことができる。そんな水光舎での彼らの生活。四作の短編で、ひとつずつの季節が過ぎる。一篇一篇が、しみじみと輝いていて、でも晴れ晴れとまではしていない感覚がとても私好みでした。かつミステリもありってのがまたよかった。この表紙のイラストレーターを選んだ編集者に感謝です。表紙が気になったらおすすめです!
→この作品が好きな人へおすすめな作品
  カラクリ荘の異人たち?もしくは賽河原町奇談? (GA文庫 し 3-1)」妖怪たちの世界と人間たちの世界の狭間にある空栗荘に住むことになった太一。こころあたたまる、までいかないところが好きです。


「しずかな日々」(椰月美智子・講談社文庫・講談社青い鳥文庫 
しずかな日々 (講談社文庫)しずかな日々 (講談社青い鳥文庫)
 母子家庭で友だちもいない生活を淡々と日常をこなしていた少年に、変化が訪れた小5の夏。この夏がなければ、おじいさんがいなければ、友達ができなければ、彼はどうなっていたのだろう。にぎやかなんだけど、心の中はとてもしずかな、よい物語でした。少年少女にもおすすめですが、大人もしみじみできると思います。おじいさんスキーとしてはこれはとてもよかった。こういうおじいさんになりたい(←あれ……?(^^;) ラストの大人になった彼が、「結婚していかにもしあわせ」な感じではなく、かつての友達と会わなくなったけれど、というところが好きだ。

 人生は劇的ではない。ぼくはこれからも生きていく。
しずかな日々 (講談社青い鳥文庫)」(椰月 美智子・講談社青い鳥文庫)p266より

「四人制姉妹百合物帳」(石川博品星海社文庫 
四人制姉妹百合物帳 (星海社文庫)
 久しぶりに出会った女子校に通う知り合い。彼女が話す「物語」は、彼女の学校のある集団についてだった。百合、とタイトルにありますが、私はその部分より、細かい描写とか表現、そして何かを好きと思う気持ちがとてもぐっときました。このひとの文章好きだなあ。下ネタもありますが(というか半分くらい(笑))、女子校なのでいやらしい感じはしませんでした。いい紙をつかってるとのことで、挿絵がカラー。

 春が来て何かを失うなんて経験したことがなかった。
四人制姉妹百合物帳 (星海社文庫)」(石川博品星海社文庫)p296より


ログ・ホライズン」7〜8巻(橙乃ままれエンターブレイン 
ログ・ホライズン (7) 供贄の黄金ログ・ホライズン (8) 雲雀(ひばり)たちの羽ばたき
 このシリーズは、「奇跡」が起きるわけのない展開が一番好きです。MMORPGものだと、どうしても「戦い」に重きがいってしまったり、「どうやって困難を乗り切るか」で終わってしまったりすることもあるのですが、この物語はそれだけでは終わらなくて、「困難を乗り切ったから見えるもの」とか、「そこにいるひと」が見えてくる、ちゃんとした「物語」だと思います。RPGものが苦手でもおすすめ!

「勝ち目がないくらい当たり前だ。"腹黒眼鏡"が持ち込んできたんだから、全員ひどい目に遭うのが当たり前なんだよ。あいつが面倒くさいクソドSなんて顔見りゃわかんだろ!」
ログ・ホライズン (7) 供贄の黄金」(橙乃ままれエンターブレイン)p252より

「楽器、曲、演奏……音、音階――四十二は四十二」
ルンデルハウス「ログ・ホライズン (8) 雲雀(ひばり)たちの羽ばたき」(橙乃ままれエンターブレイン)p190より


「シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱」(高殿円早川書房
シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱
 ホームズとワトソンが二人とも女で、しかも現代のロンドンでって!どストライクでしょ!アフガンから帰還した軍医のワトソンは、壮絶な過去を隠して新しい同居人と暮らし始める。彼女の名は「シャーリー・ホームズ」。おにんぎょさんみたいだけど毒舌、そして可愛らしいって無敵だ!そして私はアホなワトソンも好きすぎる!ものすっごい面白かった!いちいち女の子っぽい彼らの行動とか、サイバーな221Bとか、これはいいアレンジだ。

「時代は百合ホームズ!」
高殿円シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱」(高殿円早川書房)p228より

→この作品が好きな人へおすすめな作品
  ジョン、全裸連盟へ行く: John & Sherlock Casebook 1 (ハヤカワ文庫JA)BBCドラマ「SHERLOCK」のパスティーシュノベル短編集。


「革命は恋のはじまりシリーズ」(完結)(小田菜摘・エンターブレインビーズログ文庫 
革命は恋のはじまり ~え? 後宮解散ですか!?~ (ビーズログ文庫)革命は恋のはじまり -2つの求婚と目覚める想い- (ビーズログ文庫)革命は恋のはじまり ~告げる想いと自立する願い~ (ビーズログ文庫)革命は恋のはじまり ~絡まる希望と途切れぬ想い~ (ビーズログ文庫)革命は恋のはじまり ~つながる想いと開ける未来~ (ビーズログ文庫)
 革命によって後宮から出されてしまった少女が、自立して自分の道を選び、人生の伴侶も選んでいく物語。小田菜摘さんというと、歴史を絡めた大きな舞台の少女小説というイメージでしたが、こんなラブコメも書けるんですねえ。ヒーローがいまどき珍しい純情真面目青年なのもいいけど、何より女の子が世間を知ってはいるけれど頑張る少女なのが、好感を持てる要因かと思います。近代、しかも西アジアが舞台というのも珍しく、 少女小説では異質な設定がいろいろとあったりもするけれど、ラブラブなおふたりでニヤニヤできる展開もありで、読んでいてとても楽しかった。おすすめです。


「贅沢な身の上シリーズ」(完結)(我鳥彩子・集英社コバルト文庫
贅沢な身の上 ときめきは空に煌めく星の如く! (贅沢な身の上シリーズ) (コバルト文庫)贅沢な身の上 ほら、眸がときめきを伝えるから! (贅沢な身の上シリーズ) (コバルト文庫)贅沢な身の上 ときめきと巡り逢いの環を胸に! (贅沢な身の上シリーズ) (コバルト文庫)贅沢な身の上 そう、吐息がときめきを教えるの! (コバルト文庫)贅沢な身の上 ときめきの数だけ抱きしめて! (コバルト文庫)
 抱腹絶倒東洋ラブコメシリーズ・完結!ヒロインが「ラブコメ展開拒否」という変わった設定の中、残念陛下とか変なキャラクターとヒロインの鉄壁の「運」ですべてをなんとかしてしまうという話がとても面白かったです。おすすめ!

「この娘はな――第一回≪誘拐されても心配ないキャラ選手権≫番付第一位(景王朝調べ)なんだ。お願いだから簡単に攫わないでくれ」
贅沢な身の上 ときめきは空に煌めく星の如く! (贅沢な身の上シリーズ) (コバルト文庫)」(我鳥彩子・集英社コバルト文庫)p211より


「恋する狐」(折口真喜子・光文社) 
恋する狐
 与謝蕪村がちらちらでてくるけれど、あくまで主人公はその時代の一般の人々で、ちょっと変わった出来事は起きるけれど、というシリーズ短編集第二弾。表紙ものっすごくかわいいけれど、物語自体の雰囲気がもっと好きです。

「おっちゃんな、あんまり他人様の役に立つことはできんかもしれんけど、なくなったら寂しいな、という絵が描けたらええな思ってんねん」
蕪村「恋する狐」(折口真喜子・光文社)p39より


「祥五郎想い文シリーズ」(片岡麻紗子・徳間文庫) 
孫帰る―祥五郎想い文 (徳間文庫)おんな侍―祥五郎想い文 (徳間文庫)迷い猫―祥五郎想い文 (徳間文庫)
 こっそり内職もする冷飯食いの祥五郎は、友人の未亡人に片思い中。道場に現れたおんな侍をその香江のもとに居候させることにしたが……。時代物初心者でも楽しく読めそうな気がします。感情もすごく納得できる流れで楽しかったです。
→この作品が好きな人へおすすめな作品
  恋風吉原―花菖蒲の宵 (徳間文庫 (か37-1))」「秋月に香る―恋風吉原 (徳間文庫)」片岡麻紗子さんのデビュー作。花魁が安楽椅子探偵な捕り物帳。


みをつくし料理帖シリーズ」(完結)(高田郁・角川春樹事務所時代小説文庫)
美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)天の梯 みをつくし料理帖 (ハルキ文庫)
 大阪出身の女料理人、澪がさまざまな人に出会い、助けられたり、助けたり、おいしいものであたたかいこころになったりするシリーズ完結!最後まで「おいしいもの」で締めてくれたこのシリーズはほんとうに圧巻でした。女性だけではなく、男性も幸せなきもちになけるシリーズだと思います。おすすめ!

「自らを守るために苦しみから逃げることは間違いではない。だが、逃げて苦しみが深まったのならば、決して逃げるべきではない、ということを」
美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)」(高田郁・角川春樹事務所時代小説文庫)p229より