なまくらどもの記録 ver.2

読了記録(節操無しエンタメ系)

読了本

  • 白の予言者 (1) (道化の使命) (創元推理文庫)」「白の予言者 (2) (道化の使命) (創元推理文庫)」「白の予言者 (3) (道化の使命) (創元推理文庫)」「白の予言者 (4) (道化の使命) (創元推理文庫)」かつての敵である外島人たちと同盟を結ぶための婚姻のため、まずは「黒いドラゴンを殺せ」と言われた王子。彼につき従い、一行は外島にある凍えるような氷の島へ向かう。前シリーズから読み続けていたシリーズが完結。そうか、「騎士(シヴァルリ)の息子 上 <ファーシーアの一族> (創元推理文庫)」からもう十一年が……。前作から読むことがおすすめですが、このシリーズの魅力はとことんサド作者様の餌食になる主人公が、なぜかその苦しみすら読んでいて楽しいところです……が、今回は1、2巻となかなか辛かった。船と冷たい世界で、ひたすらシックにさいなまれるフィッツ(仲間も助けてくれない(笑))。しまいには心のよりどころとしてるものまで失くしてしまって……というところから、ある登場人物が現れてどんどん話が展開していきます。この3巻がすごい快感でした。しかし、ドラゴン退治というかんじんなところでは、フィッツはやはり「触媒」なので自分が主役にはならず、失望の中4巻へ。やっと自分の中の力をふるいはじめるフィッツ。道化とのつながりがたまらん。4巻の末尾は、蛇足といってもいいくらい、(このシリーズとしては)幸せというか普通の「幸せ」すぎて、んん?なぜ?と思ったのですが、これはどこかで、またフィッツが何かされたんじゃないかと「完全」になったはずが、また「少しだけ」奪われたんじゃないかと思うことにしました。ええ、そういうことなんです!(私の中では)このシリーズの中でも、ところどころに現れる狼との対話に心つかまれます。一番好きなキャラは当然のごとくナイトアイズ様ですがな!男前すぎて……!シリーズ最初から読み返したくなってきました。

<父さんから。こんど狼の夢を見たら伝えてくれって。"こんなに遅くなるまで何をしていたんだ、さっさと帰ってこい"だって>
白の予言者 (1) (道化の使命) (創元推理文庫)」(ロビン・ボブ・鍛冶靖子訳・創元推理文庫)p328より

「一族に対する誓いゆえに、これまで多くのものを失ってきた。だからいまこそ、フィッツ=シヴァルリ・ファーシーア、あなたの王子としてわたしは命じる。おのれ自身に対する誓いに忠実であれ。ヴェリティに、そしてそれ以前シュルードに真を尽くしたように、おのれ自身の心の真を尽くせ。それがあなたの王の命である」
デューティフル「白の予言者 (2) (道化の使命) (創元推理文庫)」(ロビン・ボブ・鍛冶靖子訳・創元推理文庫)p327より

「おまえはずっと昔からそうしてきたんだな。誰かがおまえに望んだことをする。ほかの誰もやりたがらない仕事を引き受ける」
白の予言者 (3) (道化の使命) (創元推理文庫)」(ロビン・ボブ・鍛冶靖子訳・創元推理文庫)p210より

 だがわたしは"変化を呼ぶ者"ではないか。
白の予言者 (4) (道化の使命) (創元推理文庫)」(ロビン・ボブ・鍛冶靖子訳・創元推理文庫)p46より

 このシリーズは長く続きましたが、訳者さん、編集さんのご苦労、ご尽力があったことと思います。(あまり売れているようにも思えないし……)本当にありがとうございました。特に訳が本当に好きで、ストレスなく、にこにこ読める訳でした。あとがきによると、シリーズ続編が出ているようですが、それは日本では出版されることはないだろう、ということでした。まあ、この後に続けても……という気もしないでもない。楽しい時間を過ごせました。願わくば、この物語を必要とする人に、一冊でも多く届きますように!