強かな女主人公の少女小説
「おこぼれ姫と円卓の騎士 白魔の逃亡 (ビーズログ文庫)」を読んで、(物理的ではなく)強い女主人公の少女小説って楽しい!って思えたのでいくつかご紹介。
ご紹介するまでもない有名なシリーズですが、特に女の子が活躍する巻が快感なことうけあい。それぞれがそれぞれに辛い憂き目にあい、そこから変わっていくことによって得るちから。
- 「ヴァルデマールの使者シリーズ」(マーセデス・ラッキー・澤田澄江訳・C NovelsFantasia)(完結)
愛してかばってくれる人はだれもいない、孤独な少女が、絶望の果てに出会ったのは角のある神馬。それは、彼女が女王に使える「使者」である証だった。孤独な少女が自らの努力によって愛を勝ち得ていく。まさしく少女小説の王道の一巻から始まり、最終巻の壮絶っぷりが見事。でもまたそこからカタルシスを与えてくれるのが!
理不尽な誘拐から始まり、ここまでくるなんて誰も想像ができないでしょう。そんなところまで連れて行ってくれた物語です。もうひとりの主人公、ラクリゼの鬼のような強さとその過去とか、神とひとの関係とか、いろんな角度から楽しめる物語でした。
- 「クシエルシリーズ」(ジャクリーン・ケアリー・和爾桃子訳・早川文庫FT)(完結)
高級娼婦兼スパイとなるべくして育てられたフェードル(真性のM)が主人公。女性であり、官能に弱いという弱点をフルに活用して生き延びていく彼女のしたたかさ、そして敵役の女性の壁っぷりがおそろしく、でも魅力的。シリーズ最初の一冊は与えられたものを浴びて生きている少女の成長を描いていましたが、そこからの成長がものすごい。「流血女神伝」とかなり近いイメージです。
- 「首の姫と首なし騎士シリーズ」(睦月けい・角川ビーンズ文庫)
インドア派で積極的なわけがない末っ子の一応姫が、政争の真っただ中でたちすくむのではなく、しっかりと見据える物語。主人公のシャーロットの、おとなしいわけではなく、冷めているわけでもなく、理性的だけど情がないわけでもない視点が面白いけど地味、なシリーズです。最近続巻が出ていませんが……出てほしい!