2016年に私が読んだ小説ベスト10
・「翼の帰る処 5 ―蒼穹の果てへ― 」(下)(妹尾ゆふ子・幻冬舎コミックス)(完結)
シリーズ最終巻。だいぶ予想(してなかったけど)とは違う方向なラスト。これでこそ「翼」な気もする。主人公が病弱で身体鍛えてなんてかけらもしてないのでアクションなし、かんじんな「大事件」も伝聞。倒れるとかふらふらしてるところがほとんどだけど、「いい台詞」だけみんなに残して去っていく……みたいな。その「すかした」感じが楽しいんだな。
最初から最後まで、フルに楽しいシリーズで、たんのうさせていただきました。新しい巻が出るたびに、「じゃあ最初から読みかえそ〜」という気分になり、たいがい読み返してニヤニヤしてしまう、そんな繰り返し(……をしてしまうくらい間が空いているんだよね!)なシリーズで、毎回毎回楽しい。特に今回の読み返し、伏線回収があったのでああ、ここかとよくわかりました。妹尾さん、楽しい物語をありがとうございました。またこんな作品が読めるといいな☆というプレッシャー込みでお願いいたします!
・「(仮)花嫁のやんごとなき事情シリーズ」(夕鷺かのう・エンターブレインビーズログ文庫)(完結)
お仕事として(仮)花嫁のバイトを引き受けたフェルと、旦那様のバトル。ひとすじなわではいかないファンタジー設定と、それに負けない旦那様のダメっぷりと甘々っぷり、フェルの図々しいところとのバランスとか、楽しいシリーズでした。
ファンタジー的なストーリーにも決着をつけ、最終巻では、「入れ替わり物」ではおなじみの「元の自分に戻るか」という問題を見事解決。結婚を「お仕事」として引き受けて終わらせ、かつ恋だけに生きるに非ず、を体言したようなシリーズになったと思います。読んできてよかった。そんなシリアス視点だけではなく、ラブコメのコメが勝ってるシリーズとしても、おすすめです。デビュー作から読んできた作者ですが、これからも活躍していけるといいなあ。
二月に番外編発売予定!
・「おこぼれ姫と円卓の騎士シリーズ」(石田リンネ・エンターブレインビーズログ文庫)
現在一番楽しみにしている(コンスタントに出ている)少女小説シリーズ。少女小説のみかけですが、中はやり手のきりっとしたお嬢様の活躍。ミステリなど、ほかのジャンルの魅力も感じさせるところもよい。そして今年は、番外編かと思いきやとんでもない展開から最終章へ向かってくれました。今までの布石がここにきて!ということをみせつけてくれるところが、とんでもなく快感でした。おすすめ!
「『情』の見返りだ。……これだけ尽くしたのだから、よき方へ変わってくれと、無意識に願っているだろう。そして勝手に失望して、傷つく」
「おこぼれ姫と円卓の騎士 再起の大地 (ビーズログ文庫)」(石田リンネ・エンターブレインビーズログ文庫)p97より
きっと、全部欲しがってもいい。
レティーツィア「おこぼれ姫と円卓の騎士 白魔の逃亡 (ビーズログ文庫)」(石田リンネ・エンターブレインビーズログ文庫)p211より
二月に続刊発売予定!
・「シンデレラ伯爵家の靴箱館シリーズ」(仲村つばき・エンターブレインビーズログ文庫)(完結)
不思議な靴にまつわるファンタジー・ミステリ+靴職人としての仕事話+身分違いのラブコメ+(これが本題)誰よりも乙女なヒーローというシリーズ・完結!あー、少女小説ってなんでこんなに私にはまるんだろうというくらい、少女小説の良さを見せつけてくれた最終巻でした。いろいろな楽しさが詰め込まれていて、おすすめなシリーズです。
・「宋代鬼談 梨生が子猫を助けようとして水鬼と出会うこと」(毛利志生子・集英社コバルト文庫)
中世?の中国の検死官が主人公の伝奇ミステリ。いろいろな要素があるけれど、主人公が薄い存在なのでそれぞれを楽しめてよかった。こーゆーの好きだなー。
・「鎌倉香房メモリーズ」1〜4巻(阿部暁子・集英社オレンジ文庫)
ある理由から祖母と暮らし、臆病な香乃。祖母と雪弥さん、そして友だちと少しずつ人とかかわることができるようになってきた。いけいけ!ではない人々が、日本にはいっぱいいそうな気がするのですが、そんな子たちも、こんな星を見つけられればよいな……と思います。暗いところに溜まるのは楽だし快楽かもしれないけど、辛いかも。
「あなたは自分が嫌だって思ってるよね。変わりたいって、だけど変われないって、毎日毎日苦しんでるよね。それ、全然無駄じゃないから。無駄じゃなかったんだって、ずっとあとになってわかるから。今ひとりぼっちでも、自分が恥ずかしくて死にそうでも、何も持ってなくても、いい」
「鎌倉香房メモリーズ 3 (集英社オレンジ文庫)」3巻(阿部暁子・集英社オレンジ文庫)p191より
・「おいしいベランダ。シリーズ」(竹岡葉月・富士見L文庫)
新女子大生が一人暮らしを始めたが、自炊は思っていたより難しい。そんなとき、隣のイケメンがごはんをつくってあげると言われて隣の部屋に入ってみたら……あ、えろくないです(笑)。隣のイケメンさんがかなり予想外な「手抜き」でもおいしい料理をするのが楽しく読めました。自炊なんて、おいしく食べられればいいんだよ!ほんと。(栄養は大事だが)そして、ラブコメに進化!進化です!
・「オークブリッジ邸の笑わない貴婦人2 後輩メイドと窓下のお嬢様」(太田紫織・新潮文庫nex)
現代の北海道に、19世紀の英国として暮らす館がある。その館でメイドとして生きることを選んだ「アイリーン」だが、今回は後輩メイドと「お嬢様」にやられてしまうというお話。現代に昔の英国というその設定の無理さをがんばっていくところとか、そこにめげる主人公が「執事」さんによろめいちゃうところとか、楽しかった……!
・「ボーイズ・ビー」(桂望実・幻冬舎文庫)
母を亡くした兄弟のうち、弟は母の死を理解できず、兄は困り果てていた。そんな中出会った老人にアドバイスされて……。ひねくれものの老人とさみしい少年。ベストカップルじゃないですか!父親は消防士で忙しく、なかなか父親に話しかけることもできない。老人は老人で、靴づくりがうまくいかず悩んでいる。それぞれの「ボーイ」が、出会って、お互いに影響しあっていくのが楽しく読めました。
今年は、ほかの桂望実さんの作品も楽しませていただいたので、来年も読んでいこうと思います。
・「リンカーン・ライムシリーズ」(ジェフリー・ディーヴァー・池田真紀子訳・文春文庫)
警邏課から転属予定だった女性警官が、ある殺人事件の現場を保存したことから、著名なリンカーン・ライムの手伝いをすることになり……。四肢麻痺だけど警察の依頼で事件解決のために手を貸す元鑑識、リンカーン・ライムを中心とした警察の捜査チームのシリーズ。「読み出したら止まらない! 女子ミステリー マストリード100 (日経文芸文庫)」でおすすめされていて読んでみたのですが、はまりこんで読んでいました。どんでん返しにつぎどんでん返し、ライムの皮肉を通り越してな毒舌、悪魔的で魅力的な悪役が楽しくてするする読めました。シリーズ長いのですが、特にシリーズ前半のほうが楽しかった。
「きみはどっちなんだ、トム?介護士か、治療奉仕者か」
「聖人ですよ」
ライムとトム「ボーン・コレクター〈下〉 (文春文庫)」(下)(ジェフリー・ディーバー・池田真紀子訳・文春文庫)p169より
・「マジシャンは騙りを破る」(ジョン・ガスパード・法村里絵訳・創元推理文庫)
マジシャンであるがために人を「だます」術を見抜くことができる主人公の周囲で、自分が関わった「超能力者」たちが殺されていく。折木奉太郎のようなイメージのちょっと皮肉な目線の主人公が楽しく読めました。
二月に続刊?発売予定!