なまくらどもの記録 ver.2

読了記録(節操無しエンタメ系)

2019年に私が読んだ小説ベスト10

 今年読んだ冊数は394冊でした。

「なめらかな世界と、その敵」(伴名練・早川書房 
なめらかな世界と、その敵
 9年前の伴名練さんのデビュー作がずっと記憶に残っていたのですが、再会できて、しかもこんな素晴らしい作品をひっさげて帰ってきてくれて嬉しい。デビュー作はダークな作品でしたが、今回はSF百合がメインの短編集。絶品でした。おすすめです。

「裏世界ピクニック3 ヤマノケハイ」(宮澤伊織・ハヤカワ文庫JA 
裏世界ピクニック3 ヤマノケハイ (ハヤカワ文庫JA)
 都市伝説+SF+百合という変わったジャンルが面白いシリーズ。や、これ、好きだわ……。主人公が振り切った「変人」なのがまた面白い。ちょっと油断してると一気に怖くなるのもまた快感。怖いもの見たさって気持ちは、どこからでてくるんだろうなあ……。

天冥の標シリーズ(小川一水ハヤカワ文庫JA)(完結) 
天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART1 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標Ⅹ 青葉よ、豊かなれ PART2 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART3 (ハヤカワ文庫JA)
 全16冊のシリーズ完結巻。最初のあの巻からここまで、長くて暗いどぶもあり、きらめいている清流あり、どろどろのエロありと、さまざまなスケールで「異なるモノ」との対峙と融和を見せてくれたシリーズでした。ひとつひとつの巻が唐突でえっ、でもこれも面白いということを毎回感じさせてくれて、しかも長いので前の巻を忘れている(笑)。何回も何回も読み返すたびに楽しめるシリーズです。
 SF読みなれていない人は最初の巻が読みにくかったら、二巻目からだったら現代の話なので読みやすいかも。それぞれの時代、それぞれの場所での人間も人間でないものの苦しみも楽しみも、すべて楽しめちゃいます!

十二国記 白銀の墟 玄の月」全四巻(小野不由美新潮文庫 
白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫)白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記 (新潮文庫)白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記 (新潮文庫)白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記 (新潮文庫)
 最終巻の発売日当日に四冊読了。どっぷり読めて満足でした。
 一番の謎が、なぜ驍宗は現れないのか、というところでしたが、壮絶でした。久しぶりの驍宗様たんのうしたけど、現れてからは意外とそんなに前に出ず……みんな療養が必要という。一番がんばったなーと思ったのは高里くんかな。せんせいって呼ぶのがたまんなかった。全てを捨ててでも、やりたいことだったんだね。載国のひとびとのそれぞれの戦い、見せていただきました。一介の荒民から、いろいろな人生あり。朱旌はかなり謎だなあ……そろそろ彼らが主役の話も読みたい。

「狼は眠らない」1・2巻(支援BIS・角川書店 
狼は眠らない 01狼は眠らない 02
 「辺境の老騎士」の若いころってこんなんだったのかも、というような若さもありつつも老成した雰囲気を持つ冒険者、レカンの物語。好奇心旺盛だけれど常に冷静な判断を欠かさないレカンが魅力的。多崎礼さんが好きなひとは好きかも。おすすめです。
 一巻は孤独な旅の印象でしたが、レカンもしがらみができてきたようでよしよし、な二巻でした。絶品!硬派だけどどこか弾力のあるレカンの魅力がたまらんです。教育も欠かさない支援BISさんの物語好き!

「狼領主のお嬢様」3巻(守野伊音・カドカワBOOKS
狼領主のお嬢様3 (カドカワBOOKS)
 希代の悪女として処刑された過去生を持つ孤児の少女が、「彼」と出会ったら……というシリーズ。今回は王城を訪れた彼らのお話。お互いがお互いを想う様が絶望と紙一重なところがハラハラさを誘うのかもしれない。
 だいたいの話では、私は「くっつくまで」が至上だと思っているのですが、このシリーズはくっついてからが至上だと断言できる!なぜって、お互いが両想いと知っていつつも、「私のほうが好きだ!」とずーーーーっといいあいつつ、そう思い合っている。しかもその想い方がえげつない。楽しいわぁ……。一番好きなラブストーリーになった。おすすめ……おすすめはしにくいけど、好きです!(告白)

貧乏お嬢さまシリーズ(リース・ボウエン・ 田辺千幸訳・原書房コージーブックス)
貧乏お嬢さま、駆け落ちする (コージーブックス)貧乏お嬢さま、イタリアへ (コージーブックス)
 貧乏なのに見栄をはれと強制されている王家の一員のジョージ―の奮闘が面白いシリーズ。コージーものの中でも、このシリーズは特に面白い。ジョージ―がかたくるしい王族の世界のルールを「最低限」守りつつも、自分のやりたいことを精一杯やっている姿が魅力的で、痛快なところが好きなんだと思う。親友や恋人、特におじいちゃんへの愛がとても深くて、そんなジョージ―が愛しくてたまらん。なんでこんな子をあの母親は……ぶつぶつ。

「銀河の森、オーロラの合唱」(太田紫織・文春文庫)
銀河の森、オーロラの合唱 (文春文庫)
 ある人物を「ママ」として暮らすことを強いられた「親のない」こどもたち。彼らは「家族」になれるのか?私がこーゆー「いいこでない」こども好きなのわかっててやってるでしょ……!というくらいつぼだらけだった。映画化してほしい……!表紙が気になって購入したけれど、正解すぎ。私は、「いいこでない」こどもがすっくと立っていく話がほんとに好きだ。

「ヤービの深い秋」(梨木香歩福音館書店 
ヤービの深い秋 (福音館創作童話シリーズ)
 ニンゲンの知り合いがいる、ちっちゃな生物のお話+人間世界の学生寮の寮監さんのお話。シリーズ第二弾。このシリーズ、梨木香歩さんで一番好きかも。イラストの感じもいいけど、登場人物誰もがどこか「弱み」を持っているところが好きです。でも、だから「かわいく」て、「わかってもらえそう」な気がしてくる。ちょっとしたことも解説しているのが児童書らしいんだけど、それ読んでると、「このことばってこうだったっけ」とか改めて思ったり。おすすめです。

厨師、怪しい鍋と旅をする」(勝山海百合 ・東京創元社 
厨師、怪しい鍋と旅をする
 料理人である厨師の一族、斉氏の一人、斉鎌は奇妙な鍋を手に入れたことから、流浪の厨師となった。「料理」「鍋」「中華」という言葉の連想からはとても想像できないような様々な物語があり、とても楽しめました。おすすめです。
 鳥がいい味を添えていました。勝山海百合さんのこういう話、もっと読みたいです。解説は南條竹則さん!