読了本

• 「スコーレNo.4 (光文社文庫)」骨董品店の長女である麻子は、可愛らしい妹へのコンプレックスを抱えながら生きてきた。少女が中学生から会社員として働くまでの物語。予想以上に面白かった。少女時代は、やや痛々しかったけれど、会社員として働くところ、とくにラストでのぴったりと合う人をみつけたところでは、本当によかったねーと思えました。恋愛だけではない、生きていく上で、恋愛もアリなんだ、というところまでゆきつくまでの麻子の悩んだり、ぐるぐる回ったり、ニヤニヤしたりする日常をお楽しみください。

　私は十六歳で、ちっぽけな骨董屋の三人姉妹の長女で、裕福ではなく、かといって特に貧しいわけでもなく、ずっと家族六人で暮らしてきて、中学も高校も自転車で通える範囲にあり、美しくも賢くもやさしくもなく、誰かとつきあった経験もなく、冒険もなく、失敗もなく、趣味も特技もなかった。なんにもない私を愼はどこへ連れていくつもりだったんだろう。
「スコーレNo.4 (光文社文庫)」（宮下奈都・光文社文庫）p124より