年末年始に読むライトノベル2010
去年やらせていただいた、「年末年始に読むライトノベル2009」を今年もやってみます。以下のようなルールで挙げてみました。
・ライトノベルレーベルから出ている。
・1巻〜5巻程度で完結している。
・2010年に一冊でも出版されている。
・今年はさらっと読めるというものよりは、読んだ!感を重視。読んだ後、物語の残滓を感じられるような。
・「テルミー きみがやろうとしている事は」(滝川廉治・集英社スーパーダッシュ文庫)
誰にとっても「悲劇」に違いないことが起きた。予告の無い死を前にして、どうするか。そんなことを考えさせられる話でした。「死を想う」物語としておすすめです。雰囲気が素晴らしかった。しんみりと読みたい物語です。
・「カラクリ荘の異人たち」(霜島ケイ・ソフトバンククリエイティブGA文庫)
もののけの世界との接点である、カラクリ荘に住む太一が、最初は人間じゃないみたいだったのに、少しずつ変わっていく物語。説教臭くない、じっと見守るわけでもなくというところがとても好きでした。女の子にもおすすめ。冬に、ぬくぬくとして読みたいシリーズです。
――何もかも、壊れるばかりじゃ、ありませんよ。
「カラクリ荘の異人たち 4 ~春来るあやかし~ (GA文庫)」(霜島ケイ・ソフトバンククリエイティブGA文庫)p300より
・「子守り魔王と姫騎士団長」全三巻(夕鷺かのう・エンターブレインビーズログ文庫)
皇帝の娘でありながら、騎士団長を任じられているけなげな主人公が、継母に命じられて向かったのは、魔王退治の旅。ドジっ娘の彼女は生き残れるのか?家事が超得意の「魔王」様とドジっ娘+従者+弟……?という組み合わせだけではなく、ファンタジー的にも南米の神様というなかなかない設定で面白かった。
・「星をさがして」(張間ミカ・徳間書店ノベルズEdge)
「星の部屋」をつくるためなら(わりと)手段を問わない「妖精遊び」の魔女、ガートルードは、そのために「夜の神」ノクスを召喚した。けっこう強引なのに可愛いところもあるルードも読んでいて痛快。情景がとても彩り豊かなお話で、児童文学と一般向けファンタジーの中間ぐらいの感覚で読めました。黒猫もいい味出していてよかった。
「君はいつも、何かを忘れようとするみたいに空を見上げるね」
ノクス「星をさがして (トクマ・ノベルズEdge)」(張間ミカ・徳間ノベルスEdge)p194より
読了本
- 「太陽が死んだ夜」戦時下にニュージーランドの捕虜収容所に収容された日本人たちは、反乱を起こそうと企んでいた。不安定な情勢の中、親友がはずかしめられた彼は、脱走を決意する……。戦時中に起きた殺人事件と、近代のニュージーランドの女子校での事件との関係は……。クローズドサークルもの。とちゅうまではかなり面白かったんだけど、ちょっと終盤失速かなあ。新人さんなので、次回作に期待です。女子寮ものが好きな人なら雰囲気はお気に召すかと。
- 「サクラダリセット4 GOODBYE is not EASY WORD to SAY (角川スニーカー文庫)」時間をリセットできる能力を持つ彼女と、記憶を維持することのできる彼の二人が住む市でのシリーズの短編集。下の台詞が、この短編集のひとつひとつが、このシリーズをよく表していると思います。偶然や奇跡なんて、この世界にはない。でも、だからこそ、ひとりひとりが選択し、実行していくことに意味がある。そんな、綺麗で、綺麗だけではないから、存在する物語がうつくしい。しっかりと通った筋があります。このシリーズは二巻を読んでちょっと違うかなーと思ったのですが、面白くなってきました。
「できるなら僕は、幸せだけを作れるようになりたい。神様が奇跡を起こすように、誰も傷つけない方法で、誰かを幸せにしたい」
浅井ケイ「サクラダリセット4 GOODBYE is not EASY WORD to SAY (角川スニーカー文庫)」(河野裕・角川スニーカー文庫)p235「Strapping/Goodbye is not an easy word to say」より