なまくらどもの記録 ver.2

読了記録(節操無しエンタメ系)

読了本

  • 百鬼園先生言行録 (1980年)夏目漱石の弟子として有名な昭和初期の作家、内田百けんの著作を初めて読みました。わかつきめぐみが好きーというので15年ぐらい前から気になっていたのを、id:teatreeさんが最近読んでいたらしたのを機に、手をつけてみようかと。お、面白かったー。つーか、なんすかこの悪ふざけ、みたいな。百鬼園先生=作者なので、まあエッセイみたいな位置づけなんだろうけど、この日常、面白すぎます。だいたい、百鬼園先生は誰の言うことでも違う話に飛んで、結局訳が分からない落ちになってしまったりするんだけど、一番爆笑したのはなんといっても「七体百鬼園」。百鬼園先生の名前には、七つも別名があるんだよーということから、その名前で七人の人物たちの座談会をしたら!という企画……今のオンライン小説とやってることかわんねー(笑)。

志保屋栄造「しかし腹加減は兎に角として死ぬのはいやだな」
土手之郁「いやでも必ず死にますよ。古来死ななかった試しが無い」
合叭入道「さうなると、今度は何病で死ぬかといふことを考へて見るのも楽しみの一つだ」
百鬼園「その次は何に生まれ変はるかという楽しみもある。しかし松の木なんかに生まれ変はって、一生何百年もの間、土手の上にぼんやり立ってゐるのはいやだな」
志道山人「百けんさんの俳句の様に大きな月がその枝にぶら下がって、猫が騒いだりしたら、うるさいね」
百鬼園「どこかで天丼の食い逃げをした奴が、枝につかまつて首をくくるかもしれない。ぢつとして腕を貸してゐるなど気が利かない話だ」
土手之郁「今度生まれ変わる物は必ずしも生き物だとは限るまいと思ひますね。薬缶に生まれ変はつたり、三味線に生まれ変はつたり、橋に生まれ変はつたり」
合叭入道「川に生まれ変はつたりするのはむづかしさうだね」
百鬼園先生言行録 (1980年)」(内田百けん・六興出版)p147「七体百鬼園」より・一部旧字を修正しています

 こんな感じに、あることを話していても、あらあらと他の話題になって、何でそういう発想かな!お前阿呆だろ!みたいな展開をしていくのがもー楽しい。他の随筆も読もうっと。私はたまたま、図書館で借りてこの版で読んだけど、文庫とか全集とかいろいろとあるみたいなので。
 あと、私が読んだのは旧仮名づかい+旧字のもの(出版は1980年)のでしたが、これでもぜんぜんOKでした。用語はほとんど昔ならではのものはなくて、今もあるものばかり(たまたま読んだのがそうだっただけかもしれないけど)で、「っ」などの小さなひらがなが全て大きくなっているのと、「生まれ変はる」→「生まれ変わる」などの多少の読み替え、あとは?と思う漢字をそのまま音読みしたら、ああ、これはこれなんだ!というところがあったりするぐらいです。新かなづかいでの版もあるらしいけど、印象変わりそうだなあ。

  • ベトナムぐるぐる。 単行本ベトナムについての絵つきエッセイ。かなり辛口(半分くらい怒鳴ってる)なので、読む時は注意。いいところもあるけど悪いところもある、って本はあるけど、ここまで悪い比重が高いのは初めて見た。行くときにどんなことに注意したらいい?と思っている方はいいと思います。私はもう、ベトナムいかなくていいや……。

 目には見えない
 言葉にはできない
 何かが空気を振動するように伝わってきて
 心が
 小さく震えた
イロドリミドリ (マーガレットコミックス)」(羽柴麻央集英社マーガレットコミックス)「イロドリミドリ」より