なまくらどもの記録 ver.2

読了記録(節操無しエンタメ系)

読了本

  • 天山の巫女ソニン(5) 大地の翼朝鮮半島風の三つの国が舞台で、三つの国のそれぞれの王子と王女は、誰も戦争を望んでいなかったのに、いよいよ戦争が始まってしまう。彼らはそれぞれの立場から、戦争を広げないために努力をするが……。シリーズ完結編。というあらすじだと、「王家もの」か、という感じですが、実はこのシリーズのだいご味はそこではなく、一般の人々の目線を常に意識し、観察している王子付きの女官、ソニンが主人公であるということです。王家の人々ももちろん観察対象なのですが、一般の庶民の人たち、それも三国のそれぞれの人々が戦争をどのように考え、敵国、味方の国をどのように考えているか、ということがきちんと描かれている作品を初めて読んだ気がします。「流される人が七割」というように本文にありましたが、「流される」ことは決して悪いことではなくて、それによって大きな勢いができる、ということなんですね。大きな勢いは善悪のどちらにでもなる可能性がある。その大きな流れをつくる可能性の大きい人がこの世界では王家の人々になっていて、それがどう流れていくか、それをどう変えていくか、ということが描かれています。「彩雲国物語」の茶州までが私は好きなのですが、それは庶民の姿が描かれていたからなのかなあとこれを読んで思いました。最近の章では、どうも上の人たちの政争ばかりで、関係ないなあという気がしてきています。読み終わって、この世界にもっとひたりたいと思いました。これで終わりなんてもったいない。もっと味わいたい。作者はこれがデビューのシリーズなので、次回作に期待です。おすすめですが、「彩雲国物語」の茶州までが好きな方には特におすすめ。ちょっと「イイコ」の元巫女のソニンが、「世界」を見る視点を味わってみてください。

「日々修行し、鍛錬し、己の目に見えるわずかな景色から、この世がどう動くのかを見極めようとしている。あれのやっていることは、巫女そのものではないか?」
大巫女「天山の巫女ソニン(5) 大地の翼」(菅野雪虫講談社)p97より

 シリーズはあと五冊で完結。今週中に読むつもりです。