2011年度ベスト本
2011年に私が読んだベスト。出版された年は無視しています。
今年読んだ本は483冊でした。海外ロマンスを本格的に読み始めました。だいぶ海外ロマンスの中の自分の好きなジャンルが分かってきた感。
春は一時期、読書をすることができなくなって驚きました。数十年生きてきて、初めての経験でした。みなさん、それぞれ初めて経験することが多かった一年だったんでしょうね。つまらないようなことでも、たいへんなことでも。
2011年度に私が読んだ小説ベスト10
・「ゴーストハントシリーズ」(完結)(小野不由美・メディアファクトリー幽ブックス)
心霊現象を科学的に解析、解決する事務所でゴーストハントの手伝いをすることになった麻衣。高校生の少女が語り手ですが、大人も読めるようにリライトされています。なによりも、「霊」とかいっても、ゴーストハントは「理論的に考える」ところからきているので、ミステリとして読めるのです。どんなに絶望的な状況でも、常に笑いを忘れないメンバーと、その中でも一番「明るい」ものを持っている麻衣の魅力がたまりません。そしてそして、ラストの真相には、だれもがびっくり!です!
「そう。光は、温かい優しい感情のことだ。同情じゃいけない。哀れみでもいけない。本当に純粋に優しい気分になって、それで相手に語りかける。それが相手に光を注ぎ込むことになる」
「ゴーストハント 7 扉を開けて (幽BOOKS)」(小野不由美・メディアファクトリー幽ブックス)p304より
・「テルミー」2巻(滝川廉治・集英社スーパーダッシュ文庫)
クラスメイトが、二人を残して全員が事故で亡くなった。一人は参加していなかった。一人は奇跡的に生き残った。「生き残り」の鬼塚輝美は、それから「テルミー」として死者の最後の望みを叶える存在となった。そしてまた、一人の願いが……。
うわー、やっぱしいいなあ、このシリーズ。静かでいて、ふつふつと熱い。去る人々よりも、「残された人々」のためにこの物語はあるのではないかと思いました。おすすめ。
「ひとりじゃなく、ふたりだった事。それだけは、良かったと思う」
「テルミー 2 きみをおもうきもち (スーパーダッシュ文庫)」(滝川廉治・集英社スーパーダッシュ文庫)p173より
・「東雲侑子は短編小説をあいしている」「東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる」(森橋ビンゴ・エンターブレインファミ通文庫)
ただの本好きだと思っていた彼女は、実は小説家だった。そして彼に、「ちょっとしたお礼」にあるお願いをしてくるのだが……。ライトノベルレーベルからでてはいるものの、萌えではなく、ごくごくまっとうな恋愛小説。かといってどきどきがないのではなく、ものすごくもだえた。こんな森橋ビンゴを待っていたのだよ!私は。
・「ドッペルゲンガーの恋人」(唐辺葉介・星海社FICTIONS)
若くして病を得て死んだ恋人を「よみがえらせる」ため、生前に取得しておいた記憶のデータをクローンの身体にうえつけた。彼女はどういう存在なのか?
ダーク系では、私はこの唐辺葉介さんが一番肌に合うかも。なんかこー、やる気の無い中での気の抜けるような会話とか、真っ暗な中に感情が足もとでうずくまっている感じとか。どこまでが悪夢なのか、どこからが現実なのか、現実が一番の悪夢なんじゃないのか、自分が生きていることが夢なんじゃないのか、その境目がゆらぐ感じが他にない感じで好きです。
・「みをつくし料理帖シリーズ」(高田郁・角川春樹事務所時代小説文庫)
上方から江戸にやってきた女料理人、澪の成長記。真摯に、しかし悩みつつ、向かい合い、決断を下していく澪が孤独で、でもしっかりと生きていってくれそうで頼もしいです。そして悩みながらも、料理はきちんとつくる澪たんがまた素晴らしい。おいしいものという面からも、女性に特にお勧めなシリーズです。時代ものをふだん読まないかたでも、楽しめる作品でもあります。
「誰しも婚礼の席では、どうか末永く幸せに、と祈る。けれど人生はそう容易うはない。良いことと同じくらい辛いこと、悲しいことが待ちうけてるんや。苦しいときに思い出してもらえるような、そんなお膳を作りなはれ」
芳「小夜しぐれ (みをつくし料理帖)」(高田郁・角川春樹事務所ハルキ文庫時代小説文庫)p234より
「ふた月に一遍かそこら、懐を気にしながらもここで旨い料理を口にすると、それだけで俺ぁ息がつけるんだ。まだ大丈夫だ、生きていける、ってな」
「心星ひとつ みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 時代小説文庫)」(高田郁・角川春樹事務所ハルキ文庫時代小説文庫)p228より
・「ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ」(青木祐子・集英社コバルト文庫)
ドレスの縫い子(というかドレスメーカー)であるクリスと、公爵家の御曹司シャーリーのラブストーリーも終盤戦。大人の女性が読む恋愛物語として本当におすすめです。夢物語ではなく、ひとりひとりが、それぞれ物を考えて生きている物語としてとても楽しく、心地良く読めます。
私が一番好きなのは、クリスの親友のパメラ。世慣れているようなのにいざ自分のこととなるとなかなか踏み切れない、とてもクリスのように素直に心を表すことができないパメラが愛しくてなりません。そしてクリスとの二人の関係もすさまじくよい……!
クリスは、仕事と俺と、どっちが大事なんだ!
……仕事だったりして……。
シャーリー「キスよりも遠く、触れるには近すぎて ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)」(青木祐子・集英社コバルト文庫)p111より
「パメラ――私は、あなたが好きなのですよ。嘘じゃない、みんな、あなたが好きなのです。あなたがすばらしい女性だから。いえ、たとえ、そうじゃなくても。あなたに幸せになってもらいたいのですよ」
イアン「聖者は薔薇を抱きしめて ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)」(青木祐子・集英社コバルト文庫)p233より
・「ログ・ホライズン」1〜5巻(橙乃ままれ・エンターブレイン)
MMORPG「エルダーテイル」の世界に気が付いたらいた、推定三万人のプレイヤーたち。腹黒眼鏡の参謀役、シロエは旧友とともに「冒険」を続けることとした。他のMMORPGものとは、また違う味がおいしい。買うたびに、深夜まで止められなくて読みふけること×五回。仲間と、そうでないものたちとの協同作業やつながりが面白い!頭脳戦や「燃え」が好きな人ならおすすめ。
「僕たちがこの世界を見る、この異世界で最初の冒険者だ」
シロエ「ログ・ホライズン (1) 異世界のはじまり」(橙乃ままれ・エンターブレイン)p270より
「一番すごいことをするにゃ」
にゃん太「ログ・ホライズン (2) キャメロットの騎士たち」(橙乃ままれ・エンターブレイン)p107より
ミノリたちは、今はじめて「5人の冒険者」から「仲間たち(パーティー)」になったのだ
「ログ・ホライズン (3)ゲームの終わり(上)」(橙乃ままれ・エンターブレイン)p286より
つまりそれは敵の撃破という「文」を戦闘という「文章」に仕立てるということ。そして戦闘という「文章」を戦術という「物語」に再構築しながら、それを「読む」ということに他ならない」
「ログ・ホライズン (4) ゲームの終わり (下)」(橙乃ままれ・エンターブレイン)p231より
「彼は策士なんかじゃないと思うよ。なりふり構わず、手段を選ばず、一切の見返りを求めず、目的以外気にかけない。そういう状況では無類の強さを発揮する。あれは妖刀のたぐいだ」
クラスティ「ログ・ホライズン (5) アキバの街の日曜日」(橙乃ままれ・エンターブレイン)p190より
・「レッド・アドミラルシリーズ」3〜5巻(完結)(栗原ちひろ・角川ビーンズ文庫)
男前な女性士官のロディアは、曲者揃いの船で副長として勤めている。異能の力を持つ彼らに対しての影響力を持つロディアに、皆ひかれていく。最初はロディアの人たらしっぷりで楽しませてもらい、異能の力、そしてラブコメと、いろいろとおいしいシリーズでした。いろいろな事情がありつつも強い思いを胸に生きていく感じがとても魅力的でした。おすすめ。
「自由っていうのは、『何をしたっていい』っていう状況のことじゃねえ。『自由になる努力をやめない』ってことだ!」
ランセ「レッド・アドミラル 宿命は絆を試す (角川ビーンズ文庫)」(栗原ちひろ・角川ビーンズ文庫)p52より
・「夢の上」2・3巻(完結)(多崎礼・中央公論新社C Novels Fantasia)
光の神の化身とされる王が統一している王国を舞台とした、ある一時代の様々な人々の生き様を描いた作品。ある物語では「この人はこう思っていた」と書かれていても、それは本当のその人の気持ちなのかなんて、わからない。実際にはこうだった、というようなところが描かれていてぐいぐい読まされる。面白すぎ。「物語」好きは必読!もっとこの世界にいたい。そんなことを思わせてくれる物語に、また出会えました。
「人の真実は一つではない」
歴史学者「夢の上3 - 光輝晶・闇輝晶 (C・NOVELSファンタジア)」(多崎礼・中央公論新社C Novels Fantasia)p122より
・「ミストクローク 霧の羽衣」全3巻(完結)(ブランドン・サンダースン・金子司訳・早川文庫FT)
「ミストボーン―霧の落とし子〈1〉灰色の帝国 (ハヤカワ文庫FT)」から始まった三部作の完結編。元盗賊団のヴィンたちは世界の終わりを感じながらも、抗い続けてきた。そんな彼女たちに迫る<破壊>神の思惑は……。
「全てに意味がある」このラストは本当にすさまじかったです。驚きがある物語が好きな方におすすめ。各部の三巻では相当な驚きが待っています。
「外面では、諸君には笑っていてもらいたい。必要があれば、傲然と。もう終わりが本当にやってくるなら、諸君には笑って終わりを迎えてほしい。"生き残り"がわれわれに教えてくれたとおりに」
エレンド「ミストクローク ―霧の羽衣― 1 新たな救い手 (ハヤカワ文庫 FT サ 1-9)」(ブランドン・サンダースン・金子司訳・早川文庫FT)p232より
「ねえ、お願いだから……その本はしまってもらえない?」
ヴィン「ミストクローク―霧の羽衣― 2古からの声 (ハヤカワ文庫FT)」(ブランドン・サンダースン・金子司訳・早川文庫FT)p101より
ひとつとして無駄ではなかった。どれも真実ではなかったが。
「ミストクローク―霧の羽衣〈3〉永遠(とわ)の大地 (ハヤカワ文庫FT)」(ブランドン・サンダースン・金子司訳・早川文庫FT)p433より
2011年度に私が読んだ新人小説ベスト3
・「わたしと男子と思春期妄想の彼女たち」(やのゆい・エンターブレインファミ通文庫)
男子諸君の「妄想している彼女」が見えるようになってしまった中学生女子、あすみが主人公のラブコメ……というには、恋未満なところも多いあすみが可愛らしいコメディ。あすみはめっちゃお人好しというよりは、自分の周囲にいるひとを、限りなく愛してしまうため、妄想彼女たちや女子までも大好きで、女子たちもそれにどきっとしてしまうというところがどうしようもなく私好み。
・「幽霊伯爵の花嫁シリーズ」(宮野美嘉・小学館ルルル文庫)
「幽霊伯爵」の元へ17人目の花嫁になることになったサアラ。一見、美貌を堂々と自慢する鼻持ちならない娘だったが、彼女は相当の変わり者で……。とことん正直なんだけど、自分自身についてはかなり正直でない、少女小説の主人公らしからぬ「天然さ」も持ち合わせていないヒロイン、サアラがとても面白く読めました。一筋縄ではいかないキャラを読みたいなら、おすすめです。
「簡単な理由ですわよ。私があなたに近付こうとするのは、私があなたを全く好きではないからですわ」
サアラ「幽霊伯爵の花嫁 (ルルル文庫)」(宮野美嘉・小学館ルルル文庫)p124より
・「返り忠兵衛江戸見聞シリーズ」(芝村凉也・双葉文庫)
兄が殺され、一人江戸へ逃げのびた中兵衛。江戸の長屋に隠れ住まうはずが、江戸中の注目を浴びる人物になってしまう!最初は、えー、そんな陰謀もの〜とか思っていたのだが、読み進めてよかったー。実は江戸の庶民がメインで、彼らを味方につけた中兵衛さんの、意識しない無双っぷりがライトノベルばりで面白い。新人さんだけど達者です!
なぜこのシリーズが面白いかというと、忠兵衛の底が誰にもわからないことだと思います。先が見えない面白さが待っている。これからも先が楽しみです。
2011年に読んだマンガベスト5
・「ウチで、お茶でも。」(月崗ヤスコ・白泉社花とゆめコミックス)
家を失って野宿していたいちえを拾ったのは、隣のクラスの無表情イケメンの内くん。内くんの家の四人兄弟と同居することになって……。新人さんです。このあらすじからはおよそ想像できないぐらい「どきっ☆」な感じではなく(笑)、実に白泉社らしい、のほほんとしつつも心にぐっとくる作品です。そしてそして、ねぼけ(無自覚)エロい内くん素晴らしい!(笑)
「もー心配!!心配で涎(よだれ)が止まんない……!!!」
「ウチで、お茶でも。 (花とゆめCOMICS)」(月崗ヤスコ・白泉社花とゆめコミックス)p48より
・「紫乃先生〆切前!」1巻(王嶋環・芳文社まんがタイムコミックス)
作家の紫乃先生は、その美貌を前面に出して売っているし、自分の綺麗なところが大好きなんだけど、作家としてもすぐれた作品を出している。弟のぼくは、そんな紫乃先生がじれったくて見ていられない。弟としてこき使われながらも(笑)、そんなところにやきもき。紫乃先生→担当編集者の片思い?がいけてる!この関係性すげーいい!
「どうせ(原稿を取りに来る)僕のことばかり考えてしまうんでしょう?」
「紫乃先生〆切前!(1) (まんがタイムコミックス)」(王嶋環・芳文社まんがタイムコミックス)p52より
・「繕い裁つ人」1・2巻(池辺葵・講談社KCデラックス)
祖母の後を継ぎ、洋服のリフォームやオーダーメイドを請け負う店を営んでいる女性が主人公。洋服のリフォームってだけでもうすいぜんものですが、淡々とした中での洋服、それ以上の愛情が感じられました。「いい話」ではなく、苦い部分もありつつ、なんとか生きている人たちの話です。
・「25時のバカンス 市川春子作品集2」(市川春子・講談社コミックスアフタヌーン)
SF短編集。絵柄よりもなによりも、その圧倒的なセンスが無二だなあと思います。SF好きなら特におすすめですけど、そうでない人もSFに興味を持てるのでは。
・「坂の上の魔法使い」「無二の王 坂の上の魔法使い2」(明治カナ子・大洋図書ミリオンコミックスHertz Series)
町はずれに住んでいる魔法使いのリー様に仕えている少年の毎日。一応BLレーベルですが、ラスト以外はほとんどないですし、少年が……ということにはなりません。淡々とした感じのなかの切ない感じが上手い。絵柄がどーのよりも、レベルの高いファンタジー度合いにほれました。
読了本
- 「猫かぶり嬢とにわか貴公子 -箱入りメイドへ華麗な転落- (ビーズログ文庫)」豪商の娘がメイドに転落?お坊ちゃまに猫かぶりを見破られてしまい……。底力のある娘で、面白かった!