なまくらどもの記録 ver.2

読了記録(節操無しエンタメ系)

2011年度に私が読んだ小説ベスト10

ゴーストハントシリーズ」(完結)(小野不由美メディアファクトリー幽ブックス)
ゴーストハント1 旧校舎怪談 (幽BOOKS)ゴーストハント2 人形の檻 (幽BOOKS)ゴーストハント3 乙女ノ祈リ (幽BOOKS)ゴーストハント4 死霊遊戯 (幽BOOKS)ASIN:4840139784ゴーストハント6 海からくるもの (幽BOOKS)ゴーストハント 7 扉を開けて (幽BOOKS)
 心霊現象を科学的に解析、解決する事務所でゴーストハントの手伝いをすることになった麻衣。高校生の少女が語り手ですが、大人も読めるようにリライトされています。なによりも、「霊」とかいっても、ゴーストハントは「理論的に考える」ところからきているので、ミステリとして読めるのです。どんなに絶望的な状況でも、常に笑いを忘れないメンバーと、その中でも一番「明るい」ものを持っている麻衣の魅力がたまりません。そしてそして、ラストの真相には、だれもがびっくり!です!

「そう。光は、温かい優しい感情のことだ。同情じゃいけない。哀れみでもいけない。本当に純粋に優しい気分になって、それで相手に語りかける。それが相手に光を注ぎ込むことになる」
   「ゴーストハント 7 扉を開けて (幽BOOKS)」(小野不由美メディアファクトリー幽ブックス)p304より

「テルミー」2巻(滝川廉治・集英社スーパーダッシュ文庫
テルミー 2 きみをおもうきもち (スーパーダッシュ文庫)
 クラスメイトが、二人を残して全員が事故で亡くなった。一人は参加していなかった。一人は奇跡的に生き残った。「生き残り」の鬼塚輝美は、それから「テルミー」として死者の最後の望みを叶える存在となった。そしてまた、一人の願いが……。
 うわー、やっぱしいいなあ、このシリーズ。静かでいて、ふつふつと熱い。去る人々よりも、「残された人々」のためにこの物語はあるのではないかと思いました。おすすめ。

「ひとりじゃなく、ふたりだった事。それだけは、良かったと思う」
テルミー 2 きみをおもうきもち (スーパーダッシュ文庫)」(滝川廉治・集英社スーパーダッシュ文庫)p173より

東雲侑子は短編小説をあいしている」「東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる」(森橋ビンゴエンターブレインファミ通文庫
東雲侑子は短編小説をあいしている (ファミ通文庫)東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる (ファミ通文庫)
 ただの本好きだと思っていた彼女は、実は小説家だった。そして彼に、「ちょっとしたお礼」にあるお願いをしてくるのだが……。ライトノベルレーベルからでてはいるものの、萌えではなく、ごくごくまっとうな恋愛小説。かといってどきどきがないのではなく、ものすごくもだえた。こんな森橋ビンゴを待っていたのだよ!私は。

ドッペルゲンガーの恋人」(唐辺葉介星海社FICTIONS)
ドッペルゲンガーの恋人 (星海社FICTIONS)
 若くして病を得て死んだ恋人を「よみがえらせる」ため、生前に取得しておいた記憶のデータをクローンの身体にうえつけた。彼女はどういう存在なのか?
 ダーク系では、私はこの唐辺葉介さんが一番肌に合うかも。なんかこー、やる気の無い中での気の抜けるような会話とか、真っ暗な中に感情が足もとでうずくまっている感じとか。どこまでが悪夢なのか、どこからが現実なのか、現実が一番の悪夢なんじゃないのか、自分が生きていることが夢なんじゃないのか、その境目がゆらぐ感じが他にない感じで好きです。

みをつくし料理帖シリーズ」(高田郁・角川春樹事務所時代小説文庫)
小夜しぐれ (みをつくし料理帖)心星ひとつ みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 時代小説文庫)
 上方から江戸にやってきた女料理人、澪の成長記。真摯に、しかし悩みつつ、向かい合い、決断を下していく澪が孤独で、でもしっかりと生きていってくれそうで頼もしいです。そして悩みながらも、料理はきちんとつくる澪たんがまた素晴らしい。おいしいものという面からも、女性に特にお勧めなシリーズです。時代ものをふだん読まないかたでも、楽しめる作品でもあります。

「誰しも婚礼の席では、どうか末永く幸せに、と祈る。けれど人生はそう容易うはない。良いことと同じくらい辛いこと、悲しいことが待ちうけてるんや。苦しいときに思い出してもらえるような、そんなお膳を作りなはれ」
芳「小夜しぐれ (みをつくし料理帖)」(高田郁・角川春樹事務所ハルキ文庫時代小説文庫)p234より

「ふた月に一遍かそこら、懐を気にしながらもここで旨い料理を口にすると、それだけで俺ぁ息がつけるんだ。まだ大丈夫だ、生きていける、ってな」
心星ひとつ みをつくし料理帖 (角川春樹事務所 時代小説文庫)」(高田郁・角川春樹事務所ハルキ文庫時代小説文庫)p228より

「ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ」(青木祐子集英社コバルト文庫
恋のドレスと陽のあたる階段 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)恋のドレスと翡翠の森 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (コバルト文庫)キスよりも遠く、触れるには近すぎて ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)ヴィクトリアン・ローズ・テーラー 恋のドレスと花ひらく淑女 (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ)聖者は薔薇を抱きしめて ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)
 ドレスの縫い子(というかドレスメーカー)であるクリスと、公爵家の御曹司シャーリーのラブストーリーも終盤戦。大人の女性が読む恋愛物語として本当におすすめです。夢物語ではなく、ひとりひとりが、それぞれ物を考えて生きている物語としてとても楽しく、心地良く読めます。
 私が一番好きなのは、クリスの親友のパメラ。世慣れているようなのにいざ自分のこととなるとなかなか踏み切れない、とてもクリスのように素直に心を表すことができないパメラが愛しくてなりません。そしてクリスとの二人の関係もすさまじくよい……!

 クリスは、仕事と俺と、どっちが大事なんだ!
 ……仕事だったりして……。
シャーリー「キスよりも遠く、触れるには近すぎて ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)」(青木祐子集英社コバルト文庫)p111より

「パメラ――私は、あなたが好きなのですよ。嘘じゃない、みんな、あなたが好きなのです。あなたがすばらしい女性だから。いえ、たとえ、そうじゃなくても。あなたに幸せになってもらいたいのですよ」
イアン「聖者は薔薇を抱きしめて ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)」(青木祐子集英社コバルト文庫)p233より

ログ・ホライズン」1〜5巻(橙乃ままれエンターブレイン
ログ・ホライズン (1) 異世界のはじまりログ・ホライズン (2) キャメロットの騎士たちログ・ホライズン (3)ゲームの終わり(上)ログ・ホライズン (4) ゲームの終わり (下)ログ・ホライズン (5) アキバの街の日曜日
 MMORPGエルダーテイル」の世界に気が付いたらいた、推定三万人のプレイヤーたち。腹黒眼鏡の参謀役、シロエは旧友とともに「冒険」を続けることとした。他のMMORPGものとは、また違う味がおいしい。買うたびに、深夜まで止められなくて読みふけること×五回。仲間と、そうでないものたちとの協同作業やつながりが面白い!頭脳戦や「燃え」が好きな人ならおすすめ。

「僕たちがこの世界を見る、この異世界で最初の冒険者だ」
シロエ「ログ・ホライズン (1) 異世界のはじまり」(橙乃ままれエンターブレイン)p270より

「一番すごいことをするにゃ」
にゃん太「ログ・ホライズン (2) キャメロットの騎士たち」(橙乃ままれエンターブレイン)p107より

 ミノリたちは、今はじめて「5人の冒険者」から「仲間たち(パーティー)」になったのだ
ログ・ホライズン (3)ゲームの終わり(上)」(橙乃ままれエンターブレイン)p286より

 つまりそれは敵の撃破という「文」を戦闘という「文章」に仕立てるということ。そして戦闘という「文章」を戦術という「物語」に再構築しながら、それを「読む」ということに他ならない」
ログ・ホライズン (4) ゲームの終わり (下)」(橙乃ままれエンターブレイン)p231より

「彼は策士なんかじゃないと思うよ。なりふり構わず、手段を選ばず、一切の見返りを求めず、目的以外気にかけない。そういう状況では無類の強さを発揮する。あれは妖刀のたぐいだ」
クラスティ「ログ・ホライズン (5) アキバの街の日曜日」(橙乃ままれエンターブレイン)p190より

「レッド・アドミラルシリーズ」3〜5巻(完結)(栗原ちひろ角川ビーンズ文庫
レッド・アドミラル  英雄は夜明けを招く (角川ビーンズ文庫)レッド・アドミラル  新艦長は嵐を誘う (角川ビーンズ文庫)レッド・アドミラル  宿命は絆を試す (角川ビーンズ文庫)
 男前な女性士官のロディアは、曲者揃いの船で副長として勤めている。異能の力を持つ彼らに対しての影響力を持つロディアに、皆ひかれていく。最初はロディアの人たらしっぷりで楽しませてもらい、異能の力、そしてラブコメと、いろいろとおいしいシリーズでした。いろいろな事情がありつつも強い思いを胸に生きていく感じがとても魅力的でした。おすすめ。

「自由っていうのは、『何をしたっていい』っていう状況のことじゃねえ。『自由になる努力をやめない』ってことだ!」
ランセ「レッド・アドミラル 宿命は絆を試す (角川ビーンズ文庫)」(栗原ちひろ角川ビーンズ文庫)p52より

「夢の上」2・3巻(完結)(多崎礼中央公論新社C Novels Fantasia)
ASIN:4125011389夢の上3 - 光輝晶・闇輝晶 (C・NOVELSファンタジア)
 光の神の化身とされる王が統一している王国を舞台とした、ある一時代の様々な人々の生き様を描いた作品。ある物語では「この人はこう思っていた」と書かれていても、それは本当のその人の気持ちなのかなんて、わからない。実際にはこうだった、というようなところが描かれていてぐいぐい読まされる。面白すぎ。「物語」好きは必読!もっとこの世界にいたい。そんなことを思わせてくれる物語に、また出会えました。

「人の真実は一つではない」
歴史学者夢の上3 - 光輝晶・闇輝晶 (C・NOVELSファンタジア)」(多崎礼中央公論新社C Novels Fantasia)p122より

「ミストクローク 霧の羽衣」全3巻(完結)(ブランドン・サンダースン・金子司訳・早川文庫FT)
ミストクローク ―霧の羽衣― 1 新たな救い手 (ハヤカワ文庫 FT サ 1-9)ミストクローク―霧の羽衣― 2古からの声 (ハヤカワ文庫FT)ミストクローク―霧の羽衣〈3〉永遠(とわ)の大地 (ハヤカワ文庫FT)
 「ミストボーン―霧の落とし子〈1〉灰色の帝国 (ハヤカワ文庫FT)」から始まった三部作の完結編。元盗賊団のヴィンたちは世界の終わりを感じながらも、抗い続けてきた。そんな彼女たちに迫る<破壊>神の思惑は……。
 「全てに意味がある」このラストは本当にすさまじかったです。驚きがある物語が好きな方におすすめ。各部の三巻では相当な驚きが待っています。

「外面では、諸君には笑っていてもらいたい。必要があれば、傲然と。もう終わりが本当にやってくるなら、諸君には笑って終わりを迎えてほしい。"生き残り"がわれわれに教えてくれたとおりに」
エレンド「ミストクローク ―霧の羽衣― 1 新たな救い手 (ハヤカワ文庫 FT サ 1-9)」(ブランドン・サンダースン・金子司訳・早川文庫FT)p232より

「ねえ、お願いだから……その本はしまってもらえない?」
ヴィン「ミストクローク―霧の羽衣― 2古からの声 (ハヤカワ文庫FT)」(ブランドン・サンダースン・金子司訳・早川文庫FT)p101より

 ひとつとして無駄ではなかった。どれも真実ではなかったが。
ミストクローク―霧の羽衣〈3〉永遠(とわ)の大地 (ハヤカワ文庫FT)」(ブランドン・サンダースン・金子司訳・早川文庫FT)p433より