なまくらどもの記録 ver.2

読了記録(節操無しエンタメ系)

読了本

  • 翼の帰る処〈2〉鏡の中の空〈上〉 (幻狼ファンタジアノベルス)」「翼の帰る処〈2〉鏡の中の空〈下〉 (幻狼ファンタジアノベルス)」北嶺領を治める皇女の元で働くヤエトは、今日も今日とてひたすらに若隠居を望んでいるのに、望みが叶うあてもなく、それどころか出世街道を望みもしないのに進んでしまう始末。病弱な一史官のはずが、どんどん責務を負わされ、仕事を自分で増やしていく哀れなヤエトくんの苦労話。今回は、出世街道がしがし登らされることになってしまって半泣きなところからスタート(笑)。前巻同様、上巻は笑った……いや、もうこれコメディだよね?というくらいたまらんかった。下手に有能って、辛いのね……そして余分な想像力を持つってダメだよね……みたいな。でも、ヤエトは大人だよなー。ヤエトは、みかけは二十代ぽいのですが、三十七という設定です。その年にふさわしい、(たまにはただこねねみたいなことも考えるけど)これがこうだからこうしなくちゃいけないよな、というところが少なくとも外から見るとちゃんと行える。それが気持ちよいです。上巻はあー、皇女とは離れちゃうのか〜と思ったのですが、下巻へのつなぎ、読んで笑った。こ、これ、上巻でおあずけ食らった人辛かったろうな……私ならたまんない(笑)。ためといてよかった……。いろいろと舞台がくるくると変わっていくのも楽しいです。なんたって妹尾さんの描く世界ですから、その土地その土地には、特有の風土や信じられているもの、そこから現れてきた芸術や行い、建物などがきちんとある。それを覗かせてもらっているような感覚が楽しくて。相手を全面的に信じられないような緊張感も面白くて、そのへんに注意をよせていたら、……シルヴァーリエン*1?そ、そこきたかー!ちょっと油断していたので一人でどきどきしちまいました。あー、これでまた旧作の価格が……幻冬舎から再販してくれないかな!な!まあそのあたりは背景なので、旧作読まなくても十二分に楽しめます。特にコアなファンタジー読者でなければ、このシリーズから入るのがおすすめです。ラブ要素苦手な人でも楽しめると思います。特に女子向けという内容でもないので、男子でも楽しめると思います。皇女可愛いしね!ヤエトの無自覚にやたら人を籠絡っぷりを楽しんでください(^^)……皇女のライバルは増えるばっかりですなー。伏線もまかれてきたし、今後も楽しみにしています!

 書き忘れてた。スーリヤ再登場ばんざい!もっとヤエトの奪い合いで皇女と争っちゃってくださいナ!ファンタジー読み的には、「名前」の力が私はとても個人的に好きなのでそこでやられます。ヤエトのごくごく個人的な歴史的観点からの視点もものすごく好み。もーいろんな角度で楽しめる作品なのです。あうあう。妹尾さんには、大人の女性が主人公の話も書いてほしいなーとかいう希望がわいてきた。読者の勝手な妄想ですが。

 ヤエトは、なんでも屋になどなりたくない。むしろ、なんにもしない屋でありたい。
 彼が望むのは、穏やかで暇でだらけた余生だけである。つまり、可及的すみやかな隠居だ。
翼の帰る処〈2〉鏡の中の空〈上〉 (幻狼ファンタジアノベルス)」(妹尾ゆふ子幻冬舎コミックス幻狼ファンタジアノベルス)p37より

「謝ることはない。それをひっくり返すのだぞ、これから。胸が躍るではないか」
皇女「翼の帰る処〈2〉鏡の中の空〈下〉 (幻狼ファンタジアノベルス)」(妹尾ゆふ子幻冬舎コミックス幻狼ファンタジアノベルス)p135より

 作者の妹尾ゆふ子さんのブログ「積読山脈造山中」にて、トラックバック用エントリあります。
 後記・ファンタジー設定が大きくなっていることに不安を感じられている方がいらっしゃるようですが、(15年来のファンから言わせてもらえれば)妹尾さんの持ち味はそちらなので、大丈夫です!(太鼓判)今回の作品のようなライトノベル的かけあい、雰囲気とファンタジー的風呂敷のつり合いをとるのは難しいかもしれませんが、応援してます。作者&編集さんよろしくお願いします!