2010年児童書ベスト5
今年出版された児童書で私が読んだ中のベスト5です。たぶんもう児童書はあまり読まないと思うので、先に公開。
・「なんでも魔女商会シリーズ」(あんびるやすこ・岩崎書店おはなしガーデン)
児童書ベスト1をあげるのであればこれ。ツンデレ魔女のシルクがお洋服をリフォームするシリーズ。特によかったのは、魔女シルクとめしつかい猫のコットンの出会いの話。最初はリフォームに不快感を持っていたシルクが、その魅力にとりつかれる最初の話でもあります。洋服のリフォームって、元々が大好きなものだからこそ、蘇れば嬉しさも増すんだよなぁ。こどもならず、大人にもおすすめです。ほんといい話、が読みたい時にぴったり。
「なんといっても15パーセントがたいせつでございます」
コットン「なんでも魔女商会15 85パーセントの黒猫 (おはなしガーデン)」(あんびるやすこ・岩崎書店おはなしガーデン)p123より
・「天才探偵Sen5 亡霊プリンスの秘密」(大崎梢・ポプラ社ポプラポケット文庫)
大崎梢さんによる天才少年探偵の活躍を描くシリーズ。学校は亡霊プリンスの話題とおまじないで大盛り上がり。千は興味ないといっていたが、おまじないのアイテムをチェックするというプリンスを不審に思い、調査を始める。都市伝説→ミステリという流れが素晴らしい。そして、新登場の生意気な(笑)キリト君がなかなかいいキャラでした。千に対抗しようとする(できてるかは置いといて〜)のは君しかいない!大崎梢さんのちょっと違った魅力が楽しめるシリーズです。
・「怪盗レッドシリーズ」(秋木真・角川書店角川つばさ文庫)
いとこのケイと一緒に「怪盗レッド」をすることになってしまった中学生の女の子、飛鳥。中学生名探偵と噂の白里にやりこめられて不満がたまっていた飛鳥だけど、大変な事態に巻き込まれて……。「名探偵コナン」が好きなこどもとかが好きそうな、こどもが活躍するミステリです。体力勝負と頭の力勝負で担当が分かれているのも楽しいし、2巻は普段はローテンションなケイが飛鳥に寄せる信頼が快感だった。おすすめ。
『できるさ。たとえ1パーセントでも可能性があるなら、その1パーセントをつかみとる。――それが怪盗レッドだ!』
ケイ「怪盗レッド(2) 中学生探偵、あらわる☆の巻 (角川つばさ文庫)」(秋木真・角川書店角川つばさ文庫)p176より
・「あなたに贈るキス」(近藤史恵・理論社ミステリーYA!)
唇同士のキスが禁止された世界。憧れていた先輩が、「キス」をしていた!?真実を探ることは、彼女にとって本当によいことなのか……。謎めいた寮制の高校でのミステリでやや百合より、ややダーク。このあたりが好きな方ならおすすめ。児童が読んだらややトラウマになりそうな気もしますが、そういう話もきっと必要なのだよ。こどもにも。「六番目の小夜子 (新潮文庫)」とか好きな人は面白いかも。
現在、世界のほとんどの国で、キス――唇同士を合わせる接吻は、違法行為として完全に禁止されている。
「あなたに贈るキス (ミステリーYA!)」(近藤史恵・理論社ミステリーYA!)p5より
・「決戦のとき クロニクル千古の闇6」(ミシェル・ペイヴァー・さくまゆみこ訳・評論社)
人類が農業を発明していなくて、まだ狩猟でだけで生計を立てている時代のヨーロッパが舞台。オオカミの言葉がわかるトラクと、トラクを「兄貴」と慕うオオカミのウルフ、そしてトラクの友達レンたちの古代冒険ファンタジーの最終巻。雪の冷たさや、ここではないどこかのしっかりとした生活描写がよく伝わる物語でした。「精霊の守り人」レベルの描写を求める人であればおすすめです。あ、ダメ男くんに耐性がある人であれば(笑)。最初はこどもだから許せたけど、何回も毎巻同じこと繰り返すトラクにはあきれたけど、ウルフとレンとフィン=ケディンのおかげで最後まで楽しく読めました。特に狼目線は絶品!