なまくらどもの記録 ver.2

読了記録(節操無しエンタメ系)

読了本

  • 魔性の子―十二国記 (新潮文庫 お 37-51 十二国記)」教育実習で見知らぬ母校を訪れた広瀬は、高里という「変わった」少年を知る。彼はかつて神隠しに遭い、彼にかかわると「祟られる」というのだが……。ひたすら「静か」な高里と、彼に対してたとえ善意でかかわろうとしても、それが刃となって返ってくる現実。そしてそれがエスカレートしていく様がこわいこわい。ファンタジーホラーとしてではなく、ミステリとして読み解く目線だけではなく、人の何かをしようという想いの底には何があるのか、というところが重く、痛い。私たちはこんなにも広瀬と同類なのだ……。「十二国記」のプレストーリーとして読むよりは、この単独の物語として読むのが、私個人としては正しい読み方のように思います。この文庫自体は、初めて売られたそのときにあの書店のこの棚から出して表紙やストーリーにひかれ、少ないお小遣いの中から買って、衝撃を受けた思い出があるので、とても思い入れが深い作品です。久しぶりに読んで、彼らに「再会」したような心持ちがしました。小野不由美さんのこういうホラーミステリも読みたいなあ。

「だって仕方がないでしょう。僕は違うので、人はみんな僕の存在を許すことができないんです」
高里「魔性の子―十二国記 (新潮文庫 お 37-51 十二国記)」(小野不由美新潮文庫)p147より

  • 海と真珠 (ハルキ文庫 う 8-1)」同い年だけれど、境遇もタイプも異なる二人。彼女たちはそれぞれに苦しい事情を抱えてはいたが、バレエに夢中な気持ちは一緒だった。二人は、「海と真珠」というタイトルで発表会に出ないかと言われる。いやー、これはバレエ習っていた人はもちろん、そうでない人にもぐっとくる作品でした。YA作品として素晴らしい。それぞれの立場と、それを支える二人のタイプの異なる母親がまたよい。こどもにおぶさりっぱなしではないのがよいよなー。おすすめです。

 もちろん、「舞姫 1―テレプシコーラ (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)」のバレエ部分が好きだった人にもおすすめです。

  • みつばの郵便屋さん (一般書)」郵便配達員の秋宏は、さまざまな人の事情を知ったりすることがありつつも、淡々と郵便物を届ける。ものっすごく気が利く草食系男子が恋愛できるんかーと心配だったのだが、最後にはちゃんと相手もできたので安心した。とちゅうもタレントの兄とか、クレーマーになりかけの子とか、いろいろと楽しいポイントが出てきた。

「直接会うよりも、そのほうがいいと思うんだ。直接会うと、その場での感情が先に出て、言いたいことをうまく言えなかったり、言い終えないうちに、本筋から外れた言葉の応酬になったりもあるからね」
みつばの郵便屋さん (一般書)」(小野寺史宜・ポプラ社)p199より