読了本

• 「wonder wonderful 上 (レガロシリーズ)」サイトtherehereで公開されている、河上朔さんによるネット小説の書籍化。書き下ろし短編あり。初版には、パスワード付きでネットで短編が読めるしかけ。ストーリーは、異世界旅行者（こっちは王子様と出会い、らぶらぶーというふつうのファンタジー恋愛ものな展開）の妹を持つ社会人の姉が、その異世界に行ってしまったら、というところから始まり、騒動に巻き込まれていくという話。少年少女ではないため、起こった出来事にただそのまま反応するのではなく、自分でそしゃくして、相手の気持ちを考えて、自分がどうすればいいか考えて、そこまで考えて、でも自分の感情もまだそこにあって、それを抑えるけれど抑えきれないことだって、大人にはあるんだよというところが、ものすごくよい。そして、それを他人に当たるのではなく、他のところで昇華させていこうとする主人公が好感が持てる。恋愛体質でない主人公が、かたくなっぽい男を自覚なく振り回すのも楽しい。コカゲが泣いているシーンのイラストがよかったー。ファンタジーっぽい出来事は起こらず、出てくる設定といえば洋風ファンタジーのような王家、政争設定のみ。しかも、主人公はいろいろあった末に城を出て庶民たちと暮らして、これが一番居心地いいよね！みたいなところがまたいいんだなー。いきなり王城で暮らすのって、ふつー、やだよね。これから下巻です。面白いとわかっている本が待っているのって幸せ。

上巻の書き下ろし短編「彼女の護衛たち」は、護衛三人組のそれぞれの視点で三本が収録。ヨーサムがもちっと色気がほしかったのー。自覚がないところがいいんだけど＞ヨーサム。

「そうやって周りに安らぎを与えて、でもそれじゃあお前はどうやって安らぐんだ、コカゲ」
ルカナート「wonder wonderful 上 (レガロシリーズ)」（河上朔・イースト・プレス）p353より