なまくらどもの記録 ver.2

読了記録(節操無しエンタメ系)

読了本

 今日のひとりごとに読書感想追加。

  • トレマリスの歌術師〈1〉万歌の歌い手」トレマリスの世界には、かつて九つの歌術があった。しかし、今はその技は多くの地方では途絶えかかっていた。その中でアンタリスでは、未だに歌術を受け継いでいる巫女たちが壁を守って生きていた。壁の中で過ごしていることに耐えられなくなっていた見習いの少女、カルウィンは壁の中で、よそものの男性、ダロウを拾う。ダロウは彼女とはまた別の歌術を使い、追われているという。カルウィンは彼とともに壁の外へ出ることになってしまうが……。萩尾望都さんのイラストが印象的な表紙で、雰囲気に合っています。浅羽莢子さんの遺作ともいえる作品らしく、訳者あとがきでは翻訳中に亡くなられたとの記述が。再び、ご冥福をお祈りいたします。「歌術」とかこういう造語が、ものすごく雰囲気つくるんだろうなー。読み始めたらやっぱり面白かった。カルウィンはけっこーはやくダロウに夢中になってしまうのですが、ダロウが過去を全くしゃべってくれなくて、本当に敵なのか味方なのかわからないところが最後まで続く、謎めいた男として描かれていて、それがまた興味をそそります。カルウィンは冒険を繰り返し、一人ずつ仲間を集めていく、という話でこの仲間も個性があふれてて楽しいですね。ファンタジー好きならおすすめ。華やかな大冒険!ではなくて、自制的な雰囲気が大人も楽しめる条件かな。

《恐れないで。この世は舞いであり、闘いではない。》
ハラサー「トレマリスの歌術師〈1〉万歌の歌い手」(ケイト・コンスタブル・浅羽莢子+小松由加里訳・ポプラ社)p299より

  • 拷問者の影(新装版 新しい太陽の書1) (ハヤカワ文庫SF)」拷問者組合の徒弟として働くセヴェリアンは、やっと一人前になったが、ある罪によって追放される。そこから、彼の新たな人生が始まった。ジーン・ウルフおすすめっすよ!という声を受けて読み始めました。一章一章がなんだかばらばら、というよりはショートの話ぐらいにまとまっているように最初は読めていたのだけれど、六章の管理者の師匠からはいりこめてきた。この師匠もう出ないのかなー。こういう人ものすごく好きなんだが。一期一会っぽいところがあるので油断ができない。全体的な雰囲気は「ダーコーヴァ年代記」のような、硬質なファンタジー。後ろにSF設定があるっぽく、たまに見え隠れするのだけれど、1巻では表に出てこなかった。ル=グィンのSFも近い雰囲気だろう。セヴェリアンは拷問者という設定からもわかるとおり、アンチヒーローっぽいので、小畑健さんの表紙イラストはそこからだろう。全身煤色はかっこいいなー。