なまくらどもの記録 ver.2

読了記録(節操無しエンタメ系)

読了本

  • 翼の帰る処 上 (幻狼ファンタジアノベルス S 1-1)妹尾ゆふ子さんの最新作。病弱な上にある「症状」を持つヤエトは、ひたすら隠居することを夢見ているのに、ついつい正直に発言してしまうことから、やっかいごとに巻き込まれがち。尚書官として辺境の地へ追いやられたヤエトは、これでゆっくりできるかと思っていたが、新たなやっかいごとを抱えただけだと知るが、更にその上の事態が待っていた。妹尾ゆふ子さん、といえば本格的な異世界ファンタジーか、と身構えて待っていたら、あら、ライトノベル?と肩透かしを食らった。けどこれはこれで面白かった。キャラクター性が前に出てるのと、会話が非常に多いのが、ライトノベルっぽいのかな。鳥のあたりの設定のディティールは、さすが妹尾さんという感じでした。軍隊じゃないんだけど、一種の軍隊もののような楽しさがあります。同胞とそうでない者たちとか。幻覚と現実の区別がつかなくなるシーンがあるのですが、そのあたりは「影の棲む城〈上〉 (創元推理文庫)」を思い出しました。神に触れられた者、というか。王女との年齢差は「チャリオンの影 上 (創元推理文庫)」っぽいかなー。面白かった、という方はこのあたりを読まれるのがおすめです。いろいろと謎が残されているので、下巻での展開を楽しみにしつつ。

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http://usagiya.hontsuna.net/article/2115448.html
 書き忘れてた。伝説の類を集めて推測する過程が面白かった。民族学、史学のはんちゅうにはいるものだろうけど、それって、自分の中の物語のかけらを集めていく作業とも似ているのかも。この世界は、既にほかの物語で語られている世界らしいので(知らなくても全く問題はないが)、当然しっかりとつじつまはあっているものと思われる。それらを読んでまた読み返すのも一興だろう。

  • 姫君達の晩餐 食前酒は赤い森で (B’s‐LOG文庫)」白雪姫、シンデレラ、眠り姫の三人の姫になぞらえた姫君たちが協力しあい、魔女に対抗する話、かな?洋風の話かと思ったら登場人物すべて日本語の名前、でも文化は西洋風なのね……「魔女」ってのは西洋の話だしなあ。そのあたりのぎこちなさと世界観の統一感がいまいち(小物でちょっときになることがあった)でしたが、やりとりはけっこう楽しめた。あとは、改行しまくりなのも、ちょっと私はだめかも……。好感度高いのはやっぱりシンデレラかな。名前は地味だが(笑)。眠り姫の紹介、名前だしてちゃだめだろ(笑)。ありがたみがない〜。わかりやすい誤字とかもあって、ちょっと編集力をみくびってしまいそうです。タイトル見て一巻完結かと思っていたのに、おもいっきり上下巻だったのには、すごく脱力した。ああ、こんな脱力するもんなんだ、とよくわかりました……上下は上下って書こうよ……。
  • アラブ・ムスリムの日常生活―ヨルダン村落滞在記 (講談社現代新書)」1980年代後半に、二年間ヨルダンに滞在、体験したことから現地に住んでいる人たちの暮らしをエッセイ風に書かれたもの。面白くて一気通読。ふだんイスラムの人の暮らしって、あまり話題に出てこないので(「トルコで私も考えた 1 (YOUNG YOUコミックス)」ぐらいだが、こっちはほんとに町!って感じ)、こうして読み物ぽいものとして読むの面白いなあ。特に面白かったのは、「幽霊」がイスラムではいない(といっても過言ではない)というところ。イスラムでは、死んだ人の魂がこの世に現れる、ということはないと宗教上信じられているため、「幽霊」はいない、「お化け」「妖怪」っぽいイメージの「ジン」と「人食鬼(グール)」ぐらいしかない、というのだ。宗教と民族学がこういうふうにくっついて、ある考えがこの地では全くない、というのはとても興味深い。まあ、認識する側がこれは「幽霊」じゃなくて「ジン」と変換しているのかもしれないけど。イスラム偶像崇拝を禁止しているので、絵画があまり発達していない、というのも新鮮だった。あたりまえかもしれないけど、そーなんだー。