2007年下半期ライトノベルサイト杯(新規作品部門)
・「暴風ガールズファイト」1〜2巻(佐々原史緒・エンターブレインファミ通文庫)
【07下期ラノベ投票/新規/9784757739192】
ファンタジーで一見コメディでもなかなかしっかりとした作品を生み出してきた佐々原史緒さんの新作は、熱血ラクロス部の話。淑女たちの集まる女学校へやってきた外部生は、新生ラクロス部で日本一を目指すとんでもない行動力と熱意を持つ子だった!優等生の委員長は、彼女の勢いに飲まれつつもラクロスに魅力を感じていくという話で、巻き込まれていく少女たちがそれぞれにラクロスにはまりこんでいく様が読んでいて快感。うまくいくだけではなく、挫折も織り込んでいくのが、スポーツものとしてはやはりいいですね。今後も期待です。
「真剣勝負のゲームに、誰も誰も嘘はつけない! やってる人も見てる人も」
五十嵐「暴風ガールズファイト 2 (ファミ通文庫)」(佐々原史緒・ファミ通文庫)p253より
・「ドラゴンキラーシリーズ」(海原育人・中央公論新社C NOVELSファンタジア)
【07下期ラノベ投票/新規/9784125010083】
治安が悪化し、誰もが武装している国でなんでも屋として働いている元軍人。ある少女に気まぐれでパンをやってから、トラウマの原因であるドラゴンキラーと関わることになってしまう。物語のキーとなるドラゴンキラーの性格が、予想したのと大幅に違っていたのが、面白い一因かと。ちょっと変わった組み合わせのコンビの皮肉たっぷりの会話を楽しんでください。
「言うわけねぇだろ。馬鹿かお前。それに前にも言ったじゃねえか。優しい言葉が欲しけりゃ金払えよ屁垂れトカゲ」
「ドラゴンキラーいっぱいあります (C・NOVELSファンタジア)」(海原育人・中央公論新社C Novels Fantasia)P199より
・「パートタイム・ナニー」(嬉野君・新書館ウィングスコミックス)
【07下期ラノベ投票/新規/9784403541193】
パートの乳母を探している外人のところに、面接で訪れた高校生。腕っ節を買われて合格はしたが、「お坊っちゃま」は自分より年上で大天才だけど途方もないトラブルメーカーだった!ぎゃはは。面白いっす〜。ばかばかしく楽しめますが、主人公はあくまで真面目なのもまた楽しい。ぼーいずらぶの香りはなし。すっきり楽しめるコメディです。
・「鉄球姫エミリー」(八薙玉造・集英社スーパーダッシュ文庫)
【07下期ラノベ投票/新規/9784086303972】
鉄球姫と呼ばれる妾腹の姫は、争いを避けるため、少ない手勢とだけでひっそりと暮らしていた。しかし、そこに暗殺者がやってくる。鉄球姫が、言うことはとことん下品なんだけど本質的には素直で直球なのが楽しめました。下品さは、コミュニケーションのためというか……オヤジのいいわけかよ(笑)。分厚いですが、あまり厚さを感じることなくすんなり読めます。下品(なんだけどさっぱり風味)+鉄+汗+死という成分ですか。ほぼ全員討ち死にしてしまうのが凄まじいです。しかし、その死にそれぞれ理由がきちんとあり、その理由があるんだから、死ぬんだということを決めたら実行してしまう、というような死です。リリシズムに走らない、正々堂々とした死の描き方に惹かれました。
・「SAS」1〜2巻(鳥居羊・ホビージャパンHJ文庫)
【07下期ラノベ投票/新規/9784894256071】
小国の公女だと言われた双子の妹を守るため、三人の美少女がやってきた!彼女たちは本当に味方なのか?軍事関係のうんちくもあり、かつ学園モノ、兄妹ものの楽しみもあり、といろいろ詰まってます。妹とのどきどきもいいですが、アナスタシアいーっすねえ……ツンデレというわけでもなく、単に冷静で任務に忠実なだけの彼女がかっとアツくなるのがよかったです。2巻では、らぶこめ方向にぐいーっと方向転換されていたのが、自分的にはちょい不満ですが、1巻は面白かった。妹が将来黒くなると予想。