なまくらどもの記録 ver.2

読了記録(節操無しエンタメ系)

2009年上半期ライトノベルサイト杯(既存作品部門)

鉄球姫エミリーシリーズ」(八薙玉造集英社スーパーダッシュ文庫
鉄球王エミリー 鉄球姫エミリー第五幕 (鉄球姫エミリーシリーズ) (スーパーダッシュ文庫)
 ちょっと下品だけど、熱く真摯な魂を持つエミリーのシリーズ完結編。
 ラストで最初に戻ってきたのがとてもよかった。このシリーズは、エミリーが下ネタばかり言うんだけど、下劣ではなく、醜くなくて、絶対に清廉ではない。このまま死んでもそれは「終わり」や「負け」、ましてや「自己犠牲」でなんてありえない、そんな戦いと死、そして生きることの魅せ方がとてもよくて好きなお話でした。多少の下品さにくすりとできる人にはおすすめ。

 全員が無事であってほしい。もう一度、みんなと会いたい。
 あまりに身勝手で一方的な願いだ。神罰が下されてもおかしくないだろう。
 そうだとしても、この一度だけの奇跡をかなえてほしい。
ロッティ「鉄球王エミリー 鉄球姫エミリー第五幕 (鉄球姫エミリーシリーズ) (スーパーダッシュ文庫)」(八薙玉造集英社スーパーダッシュ文庫)p222より

【09上期ラノベ投票/既存/9784086304863】

「カラミティナイト オルタナティブ」全2巻(高瀬彼方ソフトバンククリエイティブGA文庫
カラミティナイト-オルタナティブ- (GA文庫 た 6-1)カラミティナイト-オルタナティブ-2 (GA文庫)
 ネットでファンタジー小説を書いている智美は、攻撃に逢い、筆を折ってしまう。そんな頃に出会った異国の美少女は、不思議と自分の書く小説の登場人物と似ていた。彼女に智美を近づけようとする者のこんたんは……。以前中断されていた作品のリスタート版。
 残念ながら続きは出る予定がありませんが、ここでひと段落ついているので問題はありません。一巻はまだ物語の始まりなのですが、二巻でどろどろな感情が展開するので、そちらがおすすめ。日常の中の狂気が恐ろしくも快感で、それを超えたところのある物語です。読んだ方には、続きを旧シリーズで読んでいただけると嬉しいです。
【09上期ラノベ投票/既存/9784797352870】

ROOM NO.1301シリーズ」(新井輝富士見ミステリー文庫
ROOM NO.1301 #11  彼女はファンタスティック! (富士見ミステリー文庫)
 存在しないはずの13階には、少しさみしい人たちがよってくる。けれど、13階を出ていけば、二度と会うことはできない。どこのエロゲー?というくらい女の子がよってくる主人公のうだうだした生活を観察するシリーズ……(だったかな)最終巻。ボスキャラ・千夜子様降臨!有馬さんがそんなことになったあと、ボスはどうするのかと思いましたが、あんたは女神か……!予想を上回る人だなあ。はじめからこのラストは予告されていたわけですが、このシリーズ(特にシーナ)好きだったのでやっぱりさみしいです。新井さんおつかれさまでした。力のない主人公、やる気のない主人公が好きな人におすすめ。エロシーンはこゆくないので、さらっと流して女の子も読んでほしいナー。
【09上期ラノベ投票/既存/9784829164143】

イデアマスター GLASS HEART」(若木未生幻冬舎コミックスバーズノベルスグラスハート)
イデアマスター―GLASS HEART (バーズノベルス)
 バンドをやっている四人の青春+音楽。衝撃的な告白の後、朱音は先生に怒りっぱなしだった。少しずつ、彼らの関係がどこかに向かっているのではないかとわかってきたとき、決定的なモノが送りつけられる。そして、彼らが選ぶ道は……。
 長い期間をおいて、集英社コバルト文庫から移籍、いきなり発売された最終巻でした。でも、意外ととてもよいラストになっていてびっくりした。こう描かれると、こういうラストしかありえない、と思わさせられました。少女向け音楽青春小説として、音楽が聞こえるよい小説でした。個人的には、最初の巻と最後の巻がとびぬけて好き。けっこう主人公が漢らしくよく泣くので、そういうのがだめな人とか、文章が駄目な人はいるかもしれないけど、好きな人はとても好きになれるでしょう。特にリアルで若い人は影響受けまくりそう。青臭いところがたくさんあるけれど、笑えるところも、イイところもたくさんある物語です。

 先生がどこにいても、あたしは、きっと平気で、あたしの音を鳴らしながら、待つ。
 あたしの心臓を鳴らして待つ。
西条朱音「イデアマスター―GLASS HEART (バーズノベルス)」(若木未生幻冬舎コミックスバーズノベルスグラスハート)p246より

【09上期ラノベ投票/既存/9784344815759】

「RDG レッドデータガール」二巻(荻原規子角川書店ぎんのさじシリーズ)
RDG2  レッドデータガール  はじめてのお化粧 (カドカワ銀のさじシリーズ)
 大きな力を制御されて育った泉水子は、東京の山奥の高校に通うことになった。彼女に先駆けてその学校に転校していた深行は、彼女の力は秘密にしろと告げる。同室になった女子は明るくて泉水子も仲良くできそうで安心したところで、「黒い顔」の人を目にしてしまい、泉水子はびくびくとした新生活を始めることに。
 うっきゃー!と叫びだしたくなるくらい面白かった。学園モノですよ学園モノ!泉水子は一歩進もうかなと思って何か始めると、それが上手くいくとは限らないところがちょっとした恐怖感をともなっていて、そこがスリルある展開につながっています。ルームメイトと彼女の弟もよいキャラクターで、とてもよかった。特にルームメイトはアデイルばりに綺羅綺羅しくて、でもちゃんと一人の女の子している。彼女がまた絶対に味方、とはいえないところが面白い。深行くんのツンも冴えまくり(笑)。怪しげな学園での生活に、これからも注目です。児童書というよりは、少女小説としてとっても面白かった。たんのうしました。少女小説スキーはぜひともチェック!

「どうして、馬はきらいなの?」
「うそがつけない」
水子と深行「RDG2 レッドデータガール はじめてのお化粧 (カドカワ銀のさじシリーズ)」(荻原規子角川書店ぎんのさじシリーズ)p92より

【09上期ラノベ投票/既存/9784048739528】