なまくらどもの記録 ver.2

読了記録(節操無しエンタメ系)

読了本

  • 永遠の0 (講談社文庫)」太平洋戦争で優秀ながらも「臆病」な零戦乗りを経て、特攻隊として戦死した実の祖父の軌跡をたどる調査を始めた、ややニート気味な青年。祖父の元戦友たちの話を取材してまわる。戦争ものはほとんど読まない、特に日本側の視点のものはほんっとーにほとんど読まないのですが、ぐいぐい読めました。零戦ってそんなにすごい機体、乗る人もすごく有能だったんだ、とかそれに比較した幹部たちの無謀っぷりとか、物量的に絶望的だった状況とか。当時の日本人からの視点、だけではなくて、現代までに当時の軍人たちが勉強して外国から見た日本だとこうだった、というのを入れているのがポイントだと思う。当時の日本からの視点からだけだと、多分読んでいてしんどい。

 読んでいて少し気になったのは、老人たちの語りにあまり特徴がみられなかったこと。他の人が話していても、多分区別がつかないだろうと思いました。(ヤクザ除く)そこに区別があれば、もっとすごい物語になったんじゃないかというのが惜しい。ラストにびっくりした、という感想をみかけましたが、私は別に……まあ妥当なセンかと。で、結局、なんで特攻に「志願」したのかははっきりと書かれなかった気がしますが、強制されたからなのかなあ。自分に絶望したから?あそこまで生きることに拘泥した宮部が、行かざるを得なかった状況が……しんどいです。
 そして、そこで生きていた青年たち(まさに男の世界!)の底抜けの明るさと絶望、諦観がなんとも。全員が全員、こういうふうに考えていたとは思わないけれど、そう考えた青年たちもいただろうと私は思います。特攻隊=狂信者、テロリストということを語る人が作中にでてきますが、いくらなんでもそりゃないやろ(当時は拒否=死罪とか家族が人質にとられるとかに近かったと聞いていたので)、と私でも思いました……が、今のこどもたちならそう言われたら信じちゃうかもねー、という危惧もあり、こういう人物を出した意味はあると思いました。戦場に出ない人たちも、この時代は戦っていたと思うけれど、戦場は更に死と絶望と隣り合わせ。こんな状況を二度とつくってはいけないと改めて思いました。夏におすすめな一冊です。戦争に興味かないひとでも、エンタテインメント性を兼ね備えた小説なので、読んでいけるのでは。

「命を懸けて戦っているんだ。大福くらい喰わせてもらってもいいだろう」
永遠の0 (講談社文庫)」(百田尚樹講談社文庫)p211より