読了本
- 「喪の女王 8 流血女神伝 (流血女神伝シリーズ) (コバルト文庫)」八年に渡ってつづられた、「流血女神伝」シリーズの完結巻。様々な人々がいて、それぞれに苦しみ、喜び、人生を送ってきたこの世界の話が終わってしまうのはさみしいですが、完結巻らしく、いろいろとふろしきを畳みきったな、と思いました。
カリエの長い長い旅も、ふりだしを振り返りつつ、ある国の終焉をもって終わります。カリエの長い旅は、ある国の終焉から始まったともいえるので、ある意味、ふさわしい終わり方かと思いました。カリエはたまに落ち込むことは会っても、最後には必ず彼女らしい前向きさを見せてくれました。そんな彼女と似ているという女神、ザカリアの姿が、今回の巻では点々と現れ、そして彼女たちは去っていくのか、というところが大きな流れにもなっています。ザカリアの顔はひとつではなく、時には情け深く、時には大らかで、時には残酷で、それは人と同じで、けれど神秘的なところが魅力的な女神でした。神と人の話、にしては神の分量が(特に初期は)少な目でしたが、人が生きる世界の話、そしてそこを覗き込む滅びつつある神たちの話として、エンタテインメントとしても優れた話として、素晴らしい物語でした。シリーズ通して、おすすめです。読むなら、「帝国の娘〈前編〉―流血女神伝 (コバルト文庫)」からがおすすめ。