なまくらどもの記録 ver.2

読了記録(節操無しエンタメ系)

2008年下半期ライトノベルサイト杯(既存作品部門)

「"文学少女"シリーズ」(野村美月エンターブレインファミ通文庫 
“文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫)“文学少女”の追想画廊“文学少女”と恋する挿話集 1 (ファミ通文庫)
 文芸部の遠子先輩は、物語を書いた紙をぱくぱく食べる「妖怪」。彼女の「おやつ」のため、井上心葉は毎日三題話を書かされていた。"文学少女"の周囲で起こる文学がらみの事件を描いたシリーズ。毎回ある文学作品をテーマとして、現在の青少年たちの悩みや苦しみ、悲しみを上手く描き出しているシリーズです。ラストはちょっと心葉くんのヘタレ具合にひきぎみでしたが、それまでは素晴らしく面白かったです。ヘタレくんが好きな人、ヤンデレ気味な人が好きな人には特におすすめですが、ふつうに文学が好きな人にもおすすめ。国内外の文学を愛する遠子先輩の物語を語る魅力は絶大です。シリーズ完結。短編集も込みでおすすめ。

「けど、醜い現実があるのなら、美しい現実も存在しているんです」
心葉「“文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫)」(野村美月エンターブレインファミ通文庫)p268より

 狭き門は、すべてを捨てて入らなければならない至高の門じゃない。
“文学少女”の追想画廊」(竹岡美穂野村美月エンターブレイン)「いつか、きみに会う日まで」p108より

 人魚の姫は、成長した王子と一緒に海の王国を出て、太陽が輝く陸の国へ向かうのだ。
 ひこで傷ついたり、悩んだり、嬉しかったり、幸せだったりしながら、きっと、図太く生きてゆく。
“文学少女”と恋する挿話集 1 (ファミ通文庫)」(野村美月エンターブレインファミ通文庫)p223「無口な王子と歩き下手の人魚」より

【08下期ラノベ投票/既存/9784757745788】


さよならピアノソナタ」3・4巻(杉井光電撃文庫
さよならピアノソナタ〈3〉 (電撃文庫)さよならピアノソナタ〈4〉 (電撃文庫)
 元天才少女ピアニスト、真冬と同じクラスになったナオ。密かに隠れ家にしていた防音室をとられて怒った彼は、勝負に勝ったら防音室を使わせてくれ、と申し込んだ。なぜかピアノをやめてクラシックをエレキギターで奏でる真冬、いつもつっけんどんで、でもナオに話しかけてくる。彼らの物語は、どこへゆくのか。全4巻完結。
 1巻は、私は正直いまいちかなーと思ったけれど、3巻を最高峰に音楽と青春と恋愛の上り調子がものすごかった。クラシックのうんちくとロックなどの他の音楽を活かした物語、その合間に入る不器用なラブがたまりません。キャラクター配置的には典型的なハーレムタイプなのですが、ひとりひとりがしっかりとそれぞれらしくいきいきとしているので、心地よく読めます。女性にもおすすめ。音楽の疾走感とか、音楽でぐっとくることがある人なら、ぜひ読んでほしい作品です。良い意味でライトノベルらしくない端正さをもっているので、ライトノベル読み以外の方もいかがでしょうか。

 ぼくの中の、真冬のための場所が、大きくなりすぎていて。
さよならピアノソナタ〈3〉 (電撃文庫)」(杉井光電撃文庫)p238より

「ぐるっと一巡りして同じところに戻ってきたけれど、今はもう傷だらけで、かわりに自分の足だけで立っているじゃないか。それが成長じゃないというのなら、この世におとななんて一人もいないことになる」
神楽坂先輩「さよならピアノソナタ〈4〉 (電撃文庫)」(杉井光電撃文庫)p237より

【08下期ラノベ投票/既存/9784048674294】

「アンゲルゼシリーズ」(須賀しのぶ集英社コバルト文庫
アンゲルゼ ひびわれた世界と少年の恋 (アンゲルゼシリーズ) (コバルト文庫)アンゲルゼ  永遠の君に誓う (アンゲルゼシリーズ) (コバルト文庫)
 天使病にかかると、「処分」されるしかない。果ての見えない「天使」との戦いが続く世界で、陽菜は天使病にかかったが、「ふつうとは違う」変化をしたため、軍に囲われることになった。軍での厳しい訓練を経て、陽菜は何を得ていくのか。そして、その果てに待っているものは……。
 セカイ系に無理やりつっこまれた女の子がどうするか?という話になっていて、逃げ場なし。とことん追い詰める。1巻はちょっとこの主人公どうよ、と思いましたが、巻が進んでくるとどんどん面白くなってきます。いやーすごかった。そんじょそこらのなまぬるいどろどろ物語なんておいてけぼりです。ひねくれたおっさん視点でにやにや読むもよし。四巻完結。

「いいねえ。君は本当にかわいげがなくて面白い」
敷島「アンゲルゼ ひびわれた世界と少年の恋 (アンゲルゼシリーズ) (コバルト文庫)」(須賀しのぶ集英社コバルト文庫)p138より

「もーちゃんは、夢を見たことない? 自分は実は特別で、本当はここにいていい人間なんかじゃないって」
陽菜「アンゲルゼ 永遠の君に誓う (アンゲルゼシリーズ) (コバルト文庫)」(須賀しのぶ集英社コバルト文庫)p329より

【08下期ラノベ投票/既存/9784086012393】

「嘘つきは姫君のはじまり 見習い姫の災難」(松田志乃ぶ集英社コバルト文庫
嘘つきは姫君のはじまり 見習い姫の災難 平安ロマンティック・ミステリー (嘘つきは姫君のはじまりシリーズ) (コバルト文庫)
 乳姉妹である貧乏な姫君、馨子にお仕えしている宮子。強盗?に襲われ、気がつくと馨子の名で呼ばれていた。どうも、立場を入れ替えて馨子の父方の親族に紹介してしまったらしい。これにはある計画が関わっていて……。貧乏育ちだけど賢く奔放な馨子の相手にひーひーいっている乳姉妹の宮子が、腹ぼての馨子の代わりに姫君役をやらされて、まあ少女小説らしくどきどきなところもあるのですが、基本的にはミステリだったりする中世ロマネスク。
 ちゃんとこの時代の道具でトリックをつくってミステリしてるので感心しました。普通、時代ものとかだと、今の言葉を使わないと説明がしにくかったりするのだけど、文章を読んでいて、ひとつも「えー、こんな言葉使っていいの」とひっかかることがなく、あくまでこの時代のもので勝負しているので、雰囲気が崩れない。おすすめです。一巻はおしい!と思ったけど、二巻ですごい!になりました。一巻読んで止めている方は、ぜひ二巻を読んでください!
【08下期ラノベ投票/既存/9784086012102】

マーベラス・ツインズ契」2〜4巻(古龍・川合章子訳・コーエーGAMECITY文庫) 
マーベラス・ツインズ契 (2)めぐり逢い (GAMECITY文庫)マーベラス・ツインズ契 (3)いつわりの仮面 (GAMECITY文庫)マーベラス・ツインズ契 (4)貴公子の涙 (GAMECITY文庫)
 名高い悪人が集まった悪人谷で育った少年、小魚児は里に一人で降りてきた。小魚児が「弟子」にした少年が持っていた宝の地図を追って、とてつもなく強い(ツンデレ)美少女などがやってきた!
 いわゆる武侠小説の類に入るもので、昔の中国の江湖を舞台としたちょっと伝奇が入った小説です。ですが、戦いの描写は最小限で、小魚児はほとんどハッタリでなんとかしてしまうので、女性でも楽しめると思います。ライトノベルっぽく翻訳してあるし、挿絵も魅力的なので、そのあたりの読者におすすめ。小魚児は現世的な欲や悪いこと善いことという判断にとらわれず、美少女に対して(仕返しとして)平手打ちしたり、けっこーひどいこともしてるのに、なまぐさくなく、からっとしているので本当に楽しく読めます。対する二人目の主人公、花無缺は最初は善すぎて気持ちわるいところもあるのですが、それがだんだ変わってくるのがこれまた快感。
 「契」は、それまでの数年後を描いた話になっていて、成長したらどうかなーと思ってたけど、恋愛要素がいい味出していてとてもよかった。

「期間限定の友だちなんて、天下広しといえども俺たちだけだ。珍しくておもしろいじゃないか」
小魚児「マーベラス・ツインズ契 (2)めぐり逢い (GAMECITY文庫)」(古龍・川合章子訳・コーエーGAMECITY文庫)p277より

「《移花接玉》の技を使うためには、第一段階として、倒立して手を足としなければならない。両足を開いて頭をそらせ、息を殺して気を鎮める」
小魚児「マーベラス・ツインズ契 (4)貴公子の涙 (GAMECITY文庫)」(古龍・川合章子訳・KOEI GAMECITY文庫)p261より

【08下期ラノベ投票/既存/9784775806760】