読了本
- 「天翔の矢―ヴァルデマールの使者〈3〉 (C・NOVELSファンタジア)」「女王補佐」という特別な「使者」として一人前となったタリアは、政治の世界に足を踏み入れ、自分の周囲に悪意を感じ、しかしそれに対応することも上手くできず、とまどうばかり。女王の娘であるエルスペスの元へ敵国の王子アンカーとの婚約の話が持ち上がるが、それは破滅への序章なのか?まずは、完結おめでとうございます。旧版の「ヴァルデマール王国年代記〈1〉女王の矢 上 (現代教養文庫―A(&;アンド)Fシリーズ)」を読んでから十五年くらい。まさかこんな日がくるとは。思っていたよりずっと展開が早いし。最終巻の前半は政争、そして後半は国の外へ出るアクションと、盛り上がる展開だった。盛り上がるのは盛り上がるんだけど、そ、そこまでやる?というくらい、ずたずたにしてしまうんだもんなあ……。まあ、終わりはハッピーエンドだし、この後の物語(「運命の剣〈上〉 (創元推理文庫)」「宿命の囁き〈上〉―ヴァルデマールの風・第1部 (創元推理文庫)」)はすでに出版済みなので、安心していいんだけど、とてもそうはできない展開だった。ああ、しんどかった……。後半は一気読みすることをおすすめします。しんどかったけど、それだけのカタルシスはありました。満足。
で、今回の巻はアルベリッヒが非常に注目されていたと思うのですよ。いいっすよね〜アルベリッヒ。強面の武術教官で、ふだんとてつもない口しかきかないんだけど、生徒が死ぬと……というエピソードが非常にぐっときた。そうか、そうくるか……。スキッフ(盗賊属性)も非常に好きなキャラクターなんだけど、今回はちょっと地味だったかな。仔馬生まれたせいか。
このシリーズは非常に私は大好きなのは、世界がゆるぎないもので固められているのではなく、ゆらぎがありつつもじつにありそうな人間が生きている世界としてきちんと描かれていること、絶対的な力がどこかにはあるんだけど、話には影響することがほとんどないこと、ひとりひとり(悪役も)がこの世界で生きていると感じられること、あとどんでんがえしが面白いことかな。まっさらから読むのでしたら、「女神の誓い (創元推理文庫)」がおすすめ、としてきたんだけど、ちょっと再読しておすすめ方法を検討しようかなあと思っています。だいぶシリーズが刊行されてきて、世界が広くなってきたので……。おがきちかさん(id:chika_kt)が大好きなシリーズでもあります。
シリーズについては、マーセデス・ラッキーのはてなキーワードと、東京創元社の特集ページをごらんください。長いシリーズですが、邦訳されているのは後半のものです。
- 「魍魎の都 姫様、それはなりませぬ (講談社X文庫―ホワイトハート)」平安時代。妖を見たり話をしたりすることのできる諾子は、庭でしくしく泣いている妖がうっとおしくてしょうがなくなり、つい話しかけてしまった。その童子は、ある川を探してほしいと言い残して去る。その川はどこにあるのか?清少納言の若かりし頃の冒険譚。らぶ度あっぷしてみました!みたいな。御簾ごしってなかなかいいのぅ。体温は伝わるし。