2015年に私が読んだ小説ベスト10
・「死神うどんカフェ1号店シリーズ」2〜6巻(石川宏千花・講談社YA! ENTERTAINMENT)(完結)
死神たちのやっているカフェがいまのところ、一番いごこちのいい希子。死を見つめつつも、臆病なこどもたちが一歩を踏み出すところを描いたシリーズ、完結です。エキセントリックなこどもたちとひととの関係について、丁寧に描いてきたシリーズで、一巻よりもその後の方がずっと面白かった。大人が読んでもふーむとうなるところがあると思います。おすすめ。
死んでしまいたい、とまで思ったことはなかったけれど、希子にも、似たような体験はあった。
「死神うどんカフェ1号店 三杯目 (YA! ENTERTAINMENT)」(石川宏千花・講談社YA! ENTERTAINMENT)p136より
・「2.43 清陰高校男子バレー部 second season」(壁井ユカコ・集英社)
絶品な男子高校生中心なバレー青春小説、第二弾。今回は、県の強豪ライバルチームサイドと交互に語られます。ライバルチームのお互いの「かけがえない感」と、その安定感ゆえなゆらぎとか、ユニの周囲からの愛されっぷりとか、チカの周囲が見えてきたからなゆらゆらっぷりからラストの「バカ」っぷり、ぷりぷり楽しませていただきました。移動中にちょーニヤニヤしてしまった。「ハイキュー!」とか「おお振り」が好きな人は間違いないです。大おすすめ!
あとちょっと、あと一歩、足りないんだよなあ。あと一歩でこいつ、何かを掴みそうな気がするんだけど……でも、そのあと一歩のために、あと何回こんなことがあるんだろう……。
「2.43 清陰高校男子バレー部 second season」(壁井ユカコ・集英社)p145より
・「さよならの手口」(若竹七海・文春文庫)
探偵の仕事をお休みしている葉村晶が、たまたま知り合った元女優から請け負ったのは……。なんでこんなに面白いのというくらい楽しかった。葉村さんがいろいろ口悪いのに結局お人よしな感じが大好き。おねがいだから続き読ませて!
面白いかなと思った? それだけで、ここまで? てか、なんで白熊?
「さよならの手口 (文春文庫)」(若竹七海・文春文庫)p412より
・「つれづれ、北野坂探偵舎シリーズ」(河野裕・角川文庫)
作家と編集者のメインのミステリシリーズ。淡々とした語り口が好き。小説とは?作家とは?読者とは?編集者とは?というこのシリーズで語られてきたものが、ここにきて、という感触でした。
「でも読者はそんなこと求めちゃいない。そんなことで作品を評価しない。どれだけ不完全でも、傷だらけだったとしても、その傷さえ愛せるのが、最高の小説だ」
「つれづれ、北野坂探偵舎 トロンプルイユの指先 (角川文庫)」(河野裕・角川文庫)p268より
・「誰でもない彼の秘密」(マイケラ・マッコール・小林浩子訳・東京創元社)
後世からたたえられる詩人となるエミリ・ディキンソンをヒロインとした少女時代のミステリ。名も知らぬ「彼」が死体で見つかった。母親から虐待に近いくらいに過保護に育ったエミリーが、詩人の魂を育てながら、何が正しいのかを求めていく。創元らしく硬質でありながら実に楽しい作品でした。エミリーのことばがやはり魅力的で、抑圧されて育ち、かつこの後隠遁者として生きていくと聞くと、ますます興味を引かれます。おすすめ。
・「倫敦千夜一夜物語 あなたの一冊、お貸しします。」(久賀理世・集英社オレンジ文庫)
ロンドンの郊外の小さな町の貸本屋を営む美しい兄妹。お互いを慈しむ兄妹のところに、かつての知り合いが現れた。貸本屋が舞台の日常の謎+αのミステリ。ちょっと昔の英国の雰囲気がとてもよくて、これはおすすめです。静かに笑っているけれど、内に激しいものを隠していそうな兄妹も魅力的。シリーズ化熱望!
「そういう物語も、きっと必要なのでしょうね。この現実は、めでたしめでたしで終わる出来事ばかりではないのだから」
サラ「倫敦千夜一夜物語 あなたの一冊、お貸しします。 (集英社オレンジ文庫)」(久賀理世・集英社オレンジ文庫)p299より
・「かけもち女官の花○修業シリーズ」全二巻(乙川れい・エンターブレインビーズログ文庫)
画家志望だけど挫折、女官として花嫁修業をしているアルマが、理想のモデルと知り合って……というお話。ラブよりコメが勝っているのが楽しく読めました。ファンタジー設定とうまく絡めているのもよかった。最近の少女小説の中ではなかなかの白眉でした。ヒーローもあるいみしたたかで楽しかったです。ヒロインの変人っぷりにもひかない徹底した態度がステキ。
・「おこぼれ姫と円卓の騎士シリーズ」(石田リンネ・エンターブレインビーズログ文庫)
現在一番楽しみにしている(コンスタントに出ている)少女小説シリーズ。少女小説のみかけですが、中はやり手のきりっとしたお嬢様の活躍。レティ以外にも魅力的な人がいろいろとでてきます。彼らはレティに比べたら、少しのちからしかもたないかもしれないけれど、彼らの力があってレティができることもある。そう思わせてくれます。
案外やり手なのではない。やり手だからお姫様を演じることができるのだ。
「おこぼれ姫と円卓の騎士 二人の軍師 (ビーズログ文庫)」(石田リンネ・ビーズログ文庫)p29より
「どうか私に、姫として最後に仕事ができたと、来た意味があったとそう思わせて」
「おこぼれ姫と円卓の騎士 臣下の役目 (ビーズログ文庫)」(石田リンネ・ビーズログ文庫)p161より
・「(仮)花嫁のやんごとなき事情シリーズ」(夕鷺かのう・エンターブレインビーズログ文庫)
ラスト直前の大盛り上がりを見せております。この作者はファンタジー設定もしっかりしているので、そこも魅力的。コンゲームにも似ただましあいも楽しませてくれます。
・「辺境の老騎士3 バルド・ローエンと王国の太子」(支援BIS・エンターブレイン)
おいしいものテロなじじい騎士が主人公のシリーズ。武闘会はもりあがるけど、その後の宴会がやはり面白かった。その後は放浪もありの、大人なストーリーが楽しかった〜。特に大人におすすめです。異世界ファンタジーが好きなら、一読の価値はあるかと思います。
・「白の予言者 道化の使命」全四巻(ロビン・ボブ・鍛冶靖子訳・創元推理文庫)
「騎士(シヴァルリ)の息子 上 <ファーシーアの一族> (創元推理文庫)」から始まったシリーズが完結。かつての敵である外島人たちと同盟を結ぶための婚姻のため、「ドラゴンを殺せ」と言われた王子。彼につき従い、一行は外島にある凍えるような氷の島へ向かう。前作から読むことがおすすめですが、このシリーズの魅力はとことんサド作者様の餌食になる主人公が、なぜかその苦しみすら読んでいて楽しいところです。……が、今回は1、2巻となかなか辛く、しかしそこからの転換となる3巻がすごい快感でした。一番好きなキャラは当然のごとくナイトアイズ様でした。男前すぎて……!
このシリーズは長く続きましたが、訳者さん、編集さんのご苦労、ご尽力があったことと思います。本当にありがとうございました。特に訳が本当に好きで、ストレスなく、にこにこ読める訳でした。願わくば、この物語を必要とする人に、一冊でも多く届きますように!
<父さんから。こんど狼の夢を見たら伝えてくれって。"こんなに遅くなるまで何をしていたんだ、さっさと帰ってこい"だって>
「白の予言者 (1) (道化の使命) (創元推理文庫)」(ロビン・ボブ・鍛冶靖子訳・創元推理文庫)p328より
「一族に対する誓いゆえに、これまで多くのものを失ってきた。だからいまこそ、フィッツ=シヴァルリ・ファーシーア、あなたの王子としてわたしは命じる。おのれ自身に対する誓いに忠実であれ。ヴェリティに、そしてそれ以前シュルードに真を尽くしたように、おのれ自身の心の真を尽くせ。それがあなたの王の命である」
デューティフル「白の予言者 (2) (道化の使命) (創元推理文庫)」(ロビン・ボブ・鍛冶靖子訳・創元推理文庫)p327より
「おまえはずっと昔からそうしてきたんだな。誰かがおまえに望んだことをする。ほかの誰もやりたがらない仕事を引き受ける」
「白の予言者 (3) (道化の使命) (創元推理文庫)」(ロビン・ボブ・鍛冶靖子訳・創元推理文庫)p210より
だがわたしは"変化を呼ぶ者"ではないか。
「白の予言者 (4) (道化の使命) (創元推理文庫)」(ロビン・ボブ・鍛冶靖子訳・創元推理文庫)p46より